日常の中の芸術空間 平松輝子と「宇フォーラム美術館」 -国立市-

 国立駅南口から徒歩20分。国立市東の閑静な住宅街にある「宇(う)フォーラム美術館」。窓が少なく、四角い白い大きな建物の内部は、その外観から想像するよりずっと広く感じる。現代美術・抽象絵画をテーマとする同館は、開館20周年を迎え、前衛美術家で墨作家である平松輝子回顧展を開催中だ。

「宇宙」からネーミングした美術館

入口に展示されている作品「みやびの大和」は幅3.6㍍のアクリルの代表作。右手奥の部屋に展示されている作品は、当館初公開となる「ピラミッド神殿」

入口に展示されている作品「みやびの大和」は幅3.6㍍のアクリルの代表作。右手奥の部屋に展示されている作品は、当館初公開となる「ピラミッド神殿」

 平松輝子さんは1987年、この国立市東の地に自身のアトリエを設立した。「美術とは森羅万象の宇宙を描くこと」という考えから、アトリエの名前を「宇フォーラム」と命名した。その後、輝子さんの息子で一級建築士の平松朝彦さんが敷地奥に新館を建設。現代美術、抽象絵画をテーマとする美術館「宇フォーラム美術館」として1999年開館し、現在同館の館長も務める。
 日本で最初にアクリル絵の具を使った作品を発表した輝子さんの作品約3000点を同館は所蔵する。
 来年1月10日から第2弾「平松輝子展・浄土の風景」が開催される。初公開となる幅4・4㍍の「ピラミッド神殿」も含め、17点を展示している。

幼児期の原体験を新たな手法で表現

同美術館の外観

同美術館の外観

 輝子さんは1921年生まれ。2歳9カ月の時、関東大震災を体験、父親を亡くし、現在97歳。
 「作品の中に幼い時の原体験が現れているのでは」と、平松館長。
 国立第三小学校の図工の教員をしながら、日本の抽象絵画のパイオニアである故・坂田一男氏に師事していた。64年渡米し、新しい画材のアクリル絵の具と出会う。
 66年、ニューヨークの画廊で個展を開く。アクリル絵の具を和紙に染み込ませたコラージュ作品は、訪れたニューヨーカーたちを驚かせた。ニューヨークタイムス紙他3紙に報道され、輝子さんは一躍世界的に注目される美術家となった。

美術を生活の中で感じて欲しい

 コンクリート下地を左官仕上げした壁が広がる室内


コンクリート下地を左官仕上げした壁が広がる室内

 70年代は活動拠点をアメリカからドイツに移す。そこで、ドイツの現代美術の啓蒙組織である「クンストフェアライン」(kunstverein、ドイツ語で文化協会)制度を知る。市民が美術家をサポートする会で、ドイツを中心にヨーロッパには約300団体ある。輝子さんは日本でも立ち上げようと、帰国後に設立したのが「宇フォーラムワンストフェアライン」で、現在約140人ほどの会員がいる。
 同館は天井が高く、大きな作品も展示できる。広い空間で、若い美術家たちの作品を積極的に展示したり、ダンスや音楽のコラボレーションが企画されることもある。

平松啓子さん(左)と、平松朝彦館長(右)夫妻

平松啓子さん(左)と、平松朝彦館長(右)夫妻

 「生活の中で、芸術を身近に感じて欲しい」と平松館長は言う。住宅街の中に、そこだけエアポケットのような芸術空間が存在する。

「平松輝子回顧展・浄土の風景」

1月10日~20日、2月7日~17日13時~17時(月・火・水休館)。国立市東4-21-10。入館料500円。2月から一部展示替え(予定)。電話番号042-580-1557同館

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