生き物の多様性を実感 玉川上水の鉛筆画20年 -鈴木忠司さん・小平市-

 立夏を迎え、新緑から日増しに色を深めて行く玉川上水。堤沿いに画架を立て、色鉛筆で微妙な緑の濃淡を描き出していく鈴木忠司さん (79=小平市)。定年後、油絵から鉛筆画に切り替え、野鳥と蝶の観察も始めて20年目に。シジュウカラが子育て中で、ヤマガラ、コゲラの巣立ちもそろそろ。「蝶、野鳥、虫や菌類も含めて自然の一部で、共存共栄して行かなければ」と、その思いを込めて鉛筆画に。

毎朝、野鳥に挨拶がてら観察

4月下旬・穀雨(4月19~5月4日)に巣立った直後のエナガ=鈴木さん撮影

 日の出と共に子育て中のシジュウカラは、ヒナに餌を運び始める。先月末、鈴木さんが朝5時前に、鎌倉橋上流で観察したところ、30秒~1分おきに1回、1時間に50回も餌を運んでいた。付近の堤には樹種が多く、コナラやクヌギの樹液を求めてやって来る蝶や蛾の幼虫を、ヒナに運んでいるシジュウカラの雌雄に、元気をもらうと言う。この付近で越冬する蝶もいる。

 連休過ぎからはエナガの二番子とヤマガラ、コゲラの巣立ちも楽しみだ。カルガモのカップル2組も近くで営巣しており、今月末頃には雛を引き連れ、玉川上水の分水・新堀用水で泳ぐ姿も待ち遠しい。「子どもの頃、この新堀用水で泳いでいた」と、小平で生まれ育った鈴木さん。川幅90㌢ぐらいの新堀用水で泳いだ記憶も懐かしむ。現在も玉川上水まで800歩の地に住んでいる。

和ませてくれる初夏の花

5月中~下旬に開花するオカトラノオとアオスジアゲハ=鈴木さん撮影

 連休明けから、卯(う)の花とも呼ばれるウツギの仲間・マルバウツギも咲き始めた堤に画架を立て、画用紙に色鉛筆を走らせる鈴木さんの傍らを、「筋力の衰えを防ぐために」「免疫力を高め、医療介護に負担をかけないように」と、散歩者が行き交う。

小暑から大暑(7月7~23日)の頃雑木林の下などに開花するキツネノカミソリとジャコウアゲハ=鈴木さん撮影

 そろそろムラサキシキブがピンクの小花を、クマミズキは純白の大きな花房を、エゴノキも豆ランプのような白い花を無数に下げる。野バラも愛らしい。「卯の花のにおう垣根に……」と、歌い親しまれてきた卯の花ことウツギも、数少なくなってきたが、目を楽しませてくれる。
 足元にはフタリシズカやオカトラノオも咲いて、市街地とは思えない野趣に浸れる。

鉛筆画に託す思い

穀雨の頃に訪れたルリビタキのオス=鈴木さん撮影

 「玉川上水は国の史跡に指定されたが、近隣の財産でもある」と言う鈴木さんは、「朝の挨拶」と称して、毎朝7時半から往復8㌔の散歩も。出会う人には「お早う」と挨拶を。その後、画材一式を自転車の荷台に積んで、鉛筆画を描きに出かける。
 ことに小川橋上流付近から、2㌔ほど下流の小川水衛所跡までは樹種が豊富で、野鳥や蝶、カブトムシやクワガタなどの昆虫、自生野草も多い。樹林地が面で残っている小平市中央公園、津田塾大学、同市指定の保存樹林に接している辺りは、オオルリやキビタキなど夏の渡り鳥の中継地にもなっている。

玉川上水・小川水衛所跡付近で鉛筆画を描いている鈴木さん

 鈴木さんは野鳥や蝶の観察を通して、生物の多様性が自然環境の豊かさにつながることが分かったと言う。二十四節気は植物や蝶野鳥のサイクルとリンクしていることも実感した。積年の経験と思いを、色鉛筆で表現できる可能性を求めている。
 武蔵野美大油絵科卒、市職員時代も油絵を描いてきたが、60歳で定年後、最も手軽な鉛筆画に。「鉛筆画20年、これからがスタート」と鈴木さん。密接、密集のリスクを避けて散歩するにも、玉川上水は望ましい環境ではないかと。

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