無限の宇宙に誘う 水芭蕉曼陀羅襖絵公開 4/20・21 観音寺・国分寺市

佐藤多持 生誕100年展も各地で開催中

観音寺客殿南の間の「水芭蕉曼陀羅」襖絵。円と曲線の構成は輪廻や仏教思想、種子などを連想させ、仏寺の空間に合わせた構成を

 尾瀬沼の冷たい水の中から、白い苞(ほう)に抱かれた花穂を立ち上げるミズバショウ(水芭蕉)。童子の柔肌にも似た清純な命の輝き。神秘的で官能的でもある姿から、かつてない絵画の創造を追求した画家、故佐藤多持(たもつ)さん。今年4月、生誕100年を迎えるにあたり、たましん歴史・美術館(国立市)、たましんギャラリー(立川市)、青梅市立美術館などで記念展が同時開催されている。4月20日(土)、21日(日)には佐藤さんの独自の世界「水芭蕉曼陀羅」の集大成ともいわれる国分寺・観音寺客殿の36面襖絵が特別公開される。

4歳から絵筆を握り宗教観と自然観を育む

水芭蕉に関する作品10 油彩=昭和33年

 国分寺市西町2丁目にある真言宗豊山派の名刹観音寺は、佐藤さんの生家で、鎌倉後期から室町時代に創建されたと伝えられる。15世住職の二男として、大正8(1919)年4月13日佐藤さんは誕生。幼少期から仏教思想や生死にまつわる画に触れる環境で育った。若い頃南画(文人画)を学んでいた母親の影響で、4歳から絵を描き、小学校時代には学校の裏山で、半日も絵を描いて過ごしたこともあるそうだ。
 目下、たましん歴史・美術館で開催中の「生誕100年・佐藤多持展」では、佐藤さんの小学時代に描いた観音寺前風景油絵から、中学校時代に文芸誌に掲載された俳句20句、東京美術学校(現・東京芸術大学)時代に、第2回日本画院展で初入選した大作「芥子」は、単なる写生でなく植物に内在する死生観も表現。
 戦後、スマトラ島から生還した友人と訪ねた尾瀬沼(福島県・群馬県)でのミズバショウとの出会い。ミズバショウとの一期一会からその神秘的な姿と命を、具象から形象化、抽象化して独自の世界を創造して「水芭蕉曼陀羅」を生み出すまで。さらに、心象化して行く「水芭蕉曼陀羅」の変遷を、一連の絵物語のように展観できる。

襖絵を奉納することで先祖と戦友の供養に

水芭蕉を撮る佐藤さん=昭和24年

 空を切るような曲線、あるいは円弧と丸で描き出される単純だが、リズム感に宇宙観と人間が内臓する深いものが感じられる「水芭蕉曼陀羅」シリーズ。その集大成とも云われる観音寺客殿の大広間(10畳4室)を区切る36面襖絵は、本殿と客殿、庫裏を改修するに当たって、佐藤さんは「奉納することで、先祖を供養することになる」と、話していた。
 東京美術学校時代、佐藤さんも昭和17年、麻布歩兵連隊に入隊。演習中に右手の負傷から皮下組織の細菌感染で陸軍病院に送られた。「君の右手は鉄砲より、筆を握るべきではないか」と、軍医から除隊を薦められた。戦友のことを考えると心が痛んだ。彼らへの供養も込められている。
 昭和50年(1975)、西の間と北の間を描き始め、5年もの歳月をかけて、圧巻の36面が完成した。東の間の廊下側の「夕映え」と「黒猫」を加えると38面になる。
 毎年正月と特別行事に公開されているが、今回、佐藤多持生誕100年展を記念して、4月20日と21日の2日間、10~16時、特別公開される。無料。
 同寺は国分寺市西町2・27。国立駅北口から徒歩15~20分。弁天折り返しか玉川上水駅行きバスで西町3丁目か立川ろう学校下車徒歩1~2分。電話番号042-572-3225観音寺

 ▽「生誕100年佐藤多持展~水芭蕉曼陀羅・果てしなき運動体」
 初期から60年代までを通期、60年代から90年代までを前期(5月12日まで)、90年代以降を後期(5月18日~6月30日)。10~18時(入館17時半まで)、月・祝日休館(GW期間は開館)たましん歴史・美術館。入館料300円(中学生以下無料)。電話番号042-574-1360

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