豊かな色彩と透明な輝き 手描き友禅 腰原きもの工房展 -青梅市で 5月26日までー

 緑の美しい御岳渓谷の澤乃井 櫛かんざし美術館で、手描き友禅「腰原きもの工房」(青梅市柚木)の作品展が5月26日(日)まで開かれている。市販されている友禅染めの柄は9割が印刷されたものという今、型や機械を一切使わず、伝統技法に基づく手描き友禅を守る貴重な工房だ。着物には「季節をまとう」という言葉があるが、手描きには作家の着る人への思いが伝わってくる。

15、6ある工程を一人でこなす

三代目腰原英吾さんと自らの作品 振袖「流水に蝶々・色焼箔」

 青梅線沢井駅徒歩10分。櫛かんざし美術館の第三展示室が会場だ。振袖など着物6点、帯反物8点、掛け軸、額絵、扇子などが展示されている。
 「腰原きもの工房」は70年以上、腰原新一、淳策(72)、英吾(41)親子三代にわたり友禅の伝統技法を継承する工房だ。注文主の意向に合わせて着物や帯の図案描きから始まり、一人の作家が手仕事で制作する、世界でたった一枚の着物を作る。京都や東京では糸目描き(糊置き)、彩色、地染め、箔・金箔押など、15、6もある工程を職人集団による分業制で制作されていた。

初代は糊師としてスタートした

彩色の実演をする英吾さん=櫛かんざし美術館

 日本橋の薬屋に生まれた初代新一さんは、幼い頃に両親が病死し、友禅糊師に引き取られて育つ。下絵も描ける才覚があり、後に「模様師」、今でいう着物プロデューサー・デザイナーとして活躍した。

振袖「片輪車に四季の花 本金箔」作:腰原淳策さん

 創業当初(1947年)は、友禅業界の職人が集まる戸塚町(新宿区)に工房を構え繁盛したが、40代半ばで他界。急に姉と跡を継ぐことになった16歳の淳策さんは、染料の材料を職人から聞きだすところから始めた。1975(昭和50)年、28歳で、花小金井の借家に移転。「染め上がりの出来は湿度・温度に左右されるので雨が降った日には、夫婦揃って寝ずに乾きの状態を見ていました」と淳策さん。
 努力の甲斐あって淳策さんの作品は、高島屋着物百選会にて連続特選(1971~77年)に選ばれ、着物雑誌でも取り上げられるようになり、特別注文が入るようになった。

自然の中で、草花と語り合いながら

染名古屋帯「花菖蒲」作:腰原信子さん

 手描き友禅は四季の草花を題材にすることが多い。淳策さんは、ある秋の日、青梅を訪れ、大気が澄み、野分立つ風に吹かれて河原撫子、水仙などが、それぞれを生き抜いている美しさに感動し、10年前に青梅への移転を決意する。
 「草花を通り抜ける風、光の輝き、雪の影などが柔らかく浮き上がってくる様を表現するためには、イメージではなくその場の精密な描写力が必要」という淳策さんは、今でも日々、デッサンに励む。
 腰原工房の特色といわれる「透明感、濁りのない軽やかさ」がこのような研鑽から生まれる。
 今、若い人たちの着物ブームで裾野が広がった分、柄を反物に印刷する量産品が増えてきた。手描き友禅は、印刷とは違い彩色、墨色も瑞瑞しい。「ぜひ、本物を見て欲しい。これからの東京友禅の広がりになれば」と英吾さん。現在は、淳策さん英吾さんに加え英吾さんの妻・信子さんも作家活動をしている。
 会場では手描き友禅実演会も行っている。5月11日(土)、12日(日)、18日(土)、25日(土)、26日(日)。いずれも11時と14時の2回。直接会場へ。

■美しき手描き友禅 腰原きもの工房展 澤乃井 櫛かんざし美術館第三展示室(青梅線沢井駅より徒歩10分。青梅駅からタクシーで13分)10時~17時(入館は16時半まで)、5月26日(日)まで。休館/月曜日(月曜日が祝日の場合は火曜日)。入場料600円・学生500円・小学生300円。電話番号0428-77-7051
■腰原きもの工房 電話番号0428-76-2836、HP:http://koshihara-kimono.com

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