今年で16年目、いまや国立名物となった「俳画カレンダー」創刊当初からのメンバー、嵐山光三郎さんと南伸坊さんによる「こども俳句教室」が、先月29日、同市中にあるギャラリー・明窓浄机館(めいそうじょうきかん)で開かれた。参加した小学生8人は、嵐山さんらと近くの一橋大学構内で秋を探して吟行。目や耳、肌で感じるままにメモを取りながら、句作に挑戦した。
ちるもみじ おかねであれば いいのにな
「今日、ここに来る前に一橋大学の中を通って来たら、桜の葉っぱがこんなきれいな色に」「桜紅葉(さくらもみじ)と言って、秋の季語ですね」と、嵐山さんと南さんが集まった小学生たちに、木の葉や木の実を見せながら午後1時、俳句教室が始まった。配られたテキストには、身近な秋の季語と手本になりそうな10句が添えてある。5音・7音・5音でまとめる俳句の決まりごとを伝え、「ちるもみじ おかねであれば いいのにな」と例句を読み上げた後、「いつも思っていることだけどね」と、嵐山さんが頭をかくと、小学生たちの緊張がほどけた。
一橋大学構内へ吟行に
緊張がほどけたところで、同句会を主催した明窓浄机館館長の佐藤収一さんのガイドで、一橋大学構内へ。徒歩2~3分の通用口付近で、高いところで色づいている柿の実やサザンカの花に出会う。「毎朝通っているけど、気がつかなかった」と、国立二小4年の細田祥大くんらは、早速メモをしていた。「茂みの中に松ぼっくりがいっぱい落ちてる!」と群がり、切り株や古い樹の股に茸を見つけて、「花みたい」などと声を上げながら約1時間、吟行を楽しんだ。「見て来たことや感じたことで俳句を作ってね。エッ、もうできたの? どんどん作ってよ」と、嵐山さんと南さん。
見るものが新鮮に
小学校でも国語の時間に芭蕉や一茶の句に触れたり、詠む経験をしている子どももいて、20分余りの間に31句も投句した。それら31句に番号をつけて、選評会が始まった。自分の句以外で5句を選んで○をつけた結果、最高の4票を得た句は會田大洋くんの「黒い影 カラスがとんでる 松の上」だった。二小4年の大洋くんは、パズル感覚で句を作るのが日課で“マイブーム”だとか。3票句は二小4年の山道愛理さんの「やつでのは てんぐのうちわだ おおきいぞ」。二小の5年杉浦昭太郎くんの「ぼくのこと 見ているのかな とんぼうよ」も同じ3票句だった。
吟行と選評会を終えて、嵐山さんは「俳句らしく作るよりも、感じたままや不思議さを句に、一緒に体験をする楽しさを感じてもらえたのではないか」と語り、南さんは「僕も大いに楽しみました」とのこと。
参加者全員に嵐山さんの文・南伸坊さんの絵の新刊絵本『ロボとピュータのはいくえほん』(福音館書店刊)が、プレゼントされた。
次回は来春「さくら句会」を予定。
俳画カレンダー原画展
同館では創刊当初から15年、月めくり「俳画カレンダー」を、季節感やほのぼのとした味わいで彩ってきた嵐山さんと南さん、一昨年他界した安西水丸さんの3人の俳画展を来年2月25日まで開催している。
▽明窓浄机館へは国立駅南口から、富士見通りを徒歩10分。10~17時開館、日曜祭日休館。入場料100円。電話番号042-576-0561