小学生でも操作できるミクロの世界探検 卓上電子顕微鏡

理科離れに歯止めを掛けたい -昭島の製造会社が出前授業-

左のボックスが卓上電子顕微鏡(2012年昭島市つつじが丘小)

左のボックスが卓上電子顕微鏡(2012年昭島市つつじが丘小)

 ミクロの世界を探る電子顕微鏡の開発、製造で、世界をリードする日本電子株式会社(昭島市)から、画期的な卓上走査電子顕微鏡が商品化された。地元を中心に石巻市など被災地の小学校で、理科支援出前授業に使われ、子どもたちからは「凄いっ!」と評判だ。家庭用電子レンジくらいのボックス型で、小学生でもモニターのタッチパネルを操作して、花粉や鉄錆などの微粒子、アリの頭部や蜂の羽などを精密に観察できるという。

最大倍率100万倍

300倍に拡大した水に浮くアメンボの足(本「ミクロのふしぎ」より)

300倍に拡大した水に浮くアメンボの足(本「ミクロのふしぎ」より)

 青梅線中神駅北口から歩いて約10分。日本電子は昭島市武蔵野三丁目の工業団地の一角にある。ミクロの世界、ナノテクノロジー(注参照)の最先端の技術開発がされている。
 これまで理科授業などで使われてきたのは光学顕微鏡で、見たい物を薄くスライスした試料に光を当て、レンズで拡大して観察する。倍率は2000倍が限度とされている。走査型電子顕微鏡は試料に電子線を当て、放出された電子などの情報から画像が立体的に表示される。ブラウン管と同じ原理で、最大倍率は100万倍と桁違いである。
 1949年に電子顕微鏡の完成と同時に設立された同社は、1966年に国産1号の走査電子顕微鏡を完成させた。以来、その最先端機器の開発を続けてきた。「今や電子顕微鏡は医学・生物学分野をはじめ衣食住、医薬品や車、航空機などの開発・生産過程で使われています。身の回りの物の7割から8割は、電子顕微鏡が関わっていますね」と、技術顧問の近藤俊三さん(69)は言う。材料、情報通信、ライフサイエンス、環境…あらゆる分野の研究開発の根幹を担っていて、電子顕微鏡は科学技術の発展に不可欠な機器と言う。

コンパクトで操作が簡単

同社技術顧問の近藤俊三さん

同社技術顧問の近藤俊三さん


 同社開発センターのホールに展示されている国産1号の電子顕微鏡は、高さ1・5㍍近く、タワーのような複雑な形をしている。本体も、周辺機器も大型で、価格は当時、数百坪の庭つき住宅と同じくらいだったそうだ。
 同社広報室の浜中巌さんによると、「電子顕微鏡は光学顕微鏡と同じように、誰もが簡単に操作できて、低価格で高性能な装置造りを目指してきた」という。2006年1月、開発に着手。それまでの走査電子顕微鏡とは、ソフトウェアも機械部品、電気系統も一線を画した未知への挑戦だった。
 着手してから2年、卓上型の電子顕微鏡(商品名ネオスコープ)JCM5600が完成。その後、改良を重ねて2012年の春、より使い易く性能をアップしたJCM6000が商品化された。

理科の授業でも活躍

プリントアウトした画像を貼って展示(2012年昭島市つつじが丘小)

プリントアウトした画像を貼って展示(2012年昭島市つつじが丘小)

 同社では2007年10月から、児童生徒たちの理科離れに歯止めをかけたいと、近隣の小学校を中心に理科支援出前授業を150回以上重ねてきた。ネオスコープを持ち込み、主に5、6年生を対象に教科書の内容を踏まえて実施している。技術顧問の近藤さんが電子顕微鏡について講義をした後、児童一人ひとりが操作を体験。東日本大震災以後、仙台市や石巻市など被災地でも、17回実施してきた。

近藤さんの著書「ミクロのふしぎ」

近藤さんの著書「ミクロのふしぎ」

 花粉や塩、砂糖をネオスコープの庫内に納めて引き出しを閉じると、自動的に内部は真空になり、3分後にその画像がモニターに表示される。と同時に、「凄いっ!」と児童たちの目は釘づけになる。「観察する位置を変えたり、倍率を変えたりして操作する子どもたちの姿を見ていると、理科離れなど信じられない」と、近藤さんは理科教育の副読本として、このほど「探検!発見! ミクロのふしぎ」を、少年写真新聞社から刊行した(2100円)。
 同書は走査電子顕微鏡で見た植物と昆虫・動物たちの1000分の1㍉以下の世界を、分かりやすく解説しながら、その不思議さと魅力を語っている。

 同社が本社と工場を昭島市に構えて50年余になる。感謝を込めて昭島市の教育委員会に、去る2月21日、ネオスコープ一式を寄贈した。
 (注)1マイクロ㍍=1000分の1㍉㍍。1ナノ㍍=1000分の1マイクロ㍍

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