箱舞台を自転車に乗せて 三鷹市の自宅で駄菓子屋も -「紙芝居使」せんべいさんー

 キーン、キーンと拍子木を打ち鳴らし、「さあー紙芝居の始まりだよー」と、声を張り上げるせんべいさんこと森眞澄さん。社会福祉士の資格を持つプロの紙芝居師として、自転車の荷台に箱舞台を積んで、全国で口演活動を続けている。今月13日、三鷹市役所広場で開催された、みたか商工まつりステージでも、幼児から高齢者まで300人余りが、せんべいさんの紙芝居に沸いた。

紙芝居でお茶の間の雰囲気を

「わかる人、手をあげて」とせんべいさん。景品のカードも箱舞台につるして用意

 「紙芝居をみたことがあるかな?」せんべいさんの問いかけに、手が上がり始めると、自転車の荷台に積んだ紙芝居に、子どもたちの目が集中してくる。その反応を見ながら、せんべいさんは「とんちクイズをやってみようか? 分かったら手を上げてネ」。その場の雰囲気が盛り上がってきた。
 せんべいさんの紙芝居は、昔話や童話の絵をめくりながら、語って聞かせるものではなく、コミュニケーションツールだと言う。「最近の家にはお茶の間がなくなったけど、紙芝居を通して、かつてのお茶の間のような雰囲気や場を持てたら…」と。演目は、その場に集まった人たちの年齢や反応を見ながら臨機応変に。

高齢者相談員を20数年

 躾の厳しい家庭の一人娘として育ったせんべいさんは、大学で福祉関係の学科を選んだが、宝塚歌劇団に憧れ、演劇や声優の専門学校にも通った。しかし、両親の反対で芸能への道は諦めざるを得なかった。
 その後、結婚、出産、離婚。3人の子育てに追われながら社会福祉士として、高齢者の相談員を20数年。「世のため人のためにと、しゃかりきに働いたけど、組織内では限界も」と、もやもやしていた2009年春。新聞で「プロ紙芝居師オーディション」の告知記事が目に止まった。

話術より、人柄が大事

紙芝居の使い手という意味で、「紙芝居使」と称しているせんべいさん

 「紙芝居師になりたい人なんて、殆どいないだろう」と、軽い気持ちで参加して驚いた。浅草の会場には150人近くも応募者がいた。模範口演をした安野侑志(やすの・ゆうし)さんの紙芝居は、参加者と掛け合いをしながら、“ヤッサン”の世界へ。紙芝居歴40年、世界一の紙芝居屋と呼ばれていたヤッサンから、「話術より人柄が大事。一所懸命さが人の心を動かすんだよ」と、告げられた。
 オーディションには落ちたが、せんべいさんと同様に諦めきれない仲間40人が集まって、安野さんを東京に招き、教えを乞うた。せんべいさんも社会福祉士の仕事を続けながら、修行を積む。ヤッサンから「何が好き?」と聞かれて、「せんべい」と答えたら、それが演者ネームになった。
 残念ながら安野さんは2012年8月、69歳で他界した。関東に住む仲間で「大江戸ヤッサン一座」を結成、せんべいさんも一員として活動。昭和の街角で大人気だった「街頭紙芝居で、心を伝える」ことが天職だと言う。
 紙芝居界のスーパーヒーロー「黄金バット」は老若男女を問わず人気演目で最近はオレオレ詐欺被害防止、成年後見人制度啓発などオリジナル紙芝居の口演にも力を入れている。

「せんべいの駄菓子屋さん」も人気

「100円ぴったりだ!よく計算できたね」と、子どもたちに声をかける=駄菓子屋せんべいにて

 近年は個人情報保護法の影響で、学校の連絡簿がないことが多い。自宅前を通る登下校中の児童にも気軽に声を掛けづらい。近隣の触れ合いが失われて行く一方だ。近所の子どもたちと触れ合う場をと、せんべいさんは三鷹市牟礼6丁目の自宅ガレージの一部に今年の3月12日、「せんべいの駄菓子屋さん」を開いた。不定期だが週3日ぐらいの開店日には、園児から小中学生、父母や祖父母まで訪れ混みあう。昔馴染みのラムネ菓子、「きなこ棒」「ねりっ子」など10円、20円から。子どもたちにはくじ付きや型抜き菓子が人気だ。
 ◇せんべいさんの紙芝居口演依頼は電話番号090-9135-7690

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