子どもたちに伝えたい 「見せられる日を待っていて」 ストリートパフォーマー ジロー今村さん 小平市

 「魂の肉体表現者」を自称するジロー今村さん(43=小平市)。小平中央公園で開催する「こだいらサーカス」の主催者で、多くのイベントや祭りにも出演。松江市(島根県)の観光大使であり、陸前高田(岩手県)の三陸大道芸キャラバンなど、小平を拠点にしつつ、日本全国で活躍するストリートパフォーマーだ。子どもも大人も引きつけるユーモアと、肉体を使った全力のパフォーマンスが信条。コロナ禍の影響で、3月からの仕事がすべてキャンセルになったジローさんを訪ねた。

五月晴れの公園で練習

久しぶりに椅子を使ったパフォーマンス。呼びかけていないが、小さな観客たちが集まった

 5月半ばの日曜日。木々を渡る風が心地良い季節。小平市立中央公園では、ソーシャルディスタンシング(社会的距離の保持)を守って、人々がそれぞれに過ごしている。噴水広場前で、ジローさんが長男の草志(そうし)くんとふたりで、ジャグリングや皿回しをしていた。今この場所に来るのは、練習のためだけだ。全国を飛び回っていたゴールデンウィークを自宅で過ごしたのは17年ぶり。練習は続けているけれど、「人に見られていないと感覚が鈍る」。今年はいい年になると期待した2020年は、2月後半からイベント中止の連絡が入りだし、現在、9月のイベントまですべて中止になっている。

親子で歩んできた道

まだ通学できてはいないが、高校生活を「楽しみ」と話す草志くん。バスケットボールが好きで、部活にも入りたいと言う

草志くんはこの春、都立高校に入学したが、一日も通学できていない。入学式もない。学校から届いた教科書やプリントで自習する毎日で、新しい同級生の顔も知らない。11才のときに初めて、静岡の浅間神社で「親子パフォーマンス」をした。「とても緊張した」と言うその日から5年、身長はお父さんを超え、パフォーマンスの場数もふみ、今では頼もしいパートナーだ。ジローさんのパフォーマンスを誰より近くで見てきた一人でもある。
 椅子をピラミッド型に重ねた上で倒立するパフォーマンスは、危険も伴う。草志くんにそのことを言うと、「お父さんは失敗しないと思っているから恐くない」ときっぱり。ジローさんはどんな存在? と聞くと、「大人になるために大事なことを熱心に教えてくれる尊敬できる存在です」と、答えてくれた。

子どもたちに見てほしい

皿回しの皿を投げ、お互いの皿をキャッチ。息が合う

 観客と対面したパフォーマンスができないことから、仲間の中には、インターネットの動画配信を始める人もいる。しかしジローさんは、「発信していかないといけないけど、身の丈に合わないことはしたくない」と言う。「17年間、大きなイベントも小さな商店街のイベントも常に全力でやってきました。ちゃんと評価してくれる相手だけが今後は残るだろうし、それは歓迎すべきこと。そういうつながりは消えないと思っています」 
 北海道で生まれ育ち、日本福祉大学(愛知県)で障害児教育を学んでいたときに授業で知った身体表現に可能性を感じ、ストリートパフォーマーの世界に入った。7年前、ブログにこんな文章を書いた。「俺は子ども達にまっすぐな魂の肉体表現を魅せたい、観てもらいたいと思って活動してる。クサらないでいられるのは子どもの笑顔のおかげです。自分のパフォーマンスは絶対、教科書には載らないだろうけど(笑)、生きるために大事なことは詰まってると思う。というか、込めている・・・愛 夢 魂 語るより感じろ!」。
 今も気持ちは変わらない。教科書に載らない「生きるために大事なこと」を子どもたちに伝えるため、いつか、パフォーマンスを交えた学校での講演会も実現させたいと話す。

 ジローさんのブログ https://ameblo.jp/erosjapan/
 ジローさんが出演した映画『世界を救う3秒前』(モリナオヤ監督)がYouTubeで無料動画配信中。

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