かあさん牛のヨーグルト工房発電所 磯沼ミルクファーム -八王子市-

 なだらかな小比企(こびき)の丘に位置する総面積約2ヘクタールの磯沼ミルクファームの牛舎の屋根に、太陽光発電が設置された。のんびり暮らす牛たちの頭の上で、お日様から電気がつくられている。新発電と、「世界で一番小さなヨーグルト工房」のある牧場を訪ねた。

生活圏にある牧場

樹々に囲まれているが、牛舎の屋根の上にはさんさんと太陽が降り注ぐ。太陽光発電には最適の場所だ

樹々に囲まれているが、牛舎の屋根の上にはさんさんと太陽が降り注ぐ。太陽光発電には最適の場所だ

 京王線「山田駅」から5分ほど歩くと緑の丘が見えてくる。のんびり草を食む牛たちと、隣接するアパートのベランダに翻る洗濯物が視界に入る。街の中の牧場ならではの光景だ。丘の左手を降りて行くと牛舎があり、大きな体で優しい目をした牛たちに間近で会える。見つめると、こちらをじっと見て「うももぅ~」と一声。

牛舎の屋根で発電

生まれたばかりの子羊と磯沼さん。そのようすを見守る牛たち

生まれたばかりの子羊と磯沼さん。そのようすを見守る牛たち

 太陽光発電が設置されたのは今年3月。若牛がいる牛舎の屋根の上だ。八王子市で小規模分散型自然エネルギーの普及を目指す「一般社団法人八王子協同エネルギー(通称・はちエネ)」が管理運営。はちエネの市民発電所としては3号機にあたる。「丈夫な屋根があったということが設置の一番の理由。食とエネルギーの大切さを伝えられるということも、牧場を選んだ思いの中にあります」と、はちエネ共同代表の加藤久人さん。発電量は19・8?で、再生可能エネルギーを扱う新しい電力会社「みんな電力株式会社」(本社・世田谷区)に売電している。
 はちエネから話があったとき、オーナーの磯沼正徳さんは、「おもしろいからやってみよう」と思った。「屋根にソーラーパネルをつけることで牛舎内の遮熱効果も期待できる。牛にとってもいい」。常に牛のことを考える磯沼さんらしい言葉だ。

のびのび暮らす牛たち

「ベー、ベー。こっち向いてー」と呼んだらカメラ目線をしてくれた。牛の目は優しい=小比企の丘

「ベー、ベー。こっち向いてー」と呼んだらカメラ目線をしてくれた。牛の目は優しい=小比企の丘

 お父さんの後を継いだ2代目オーナーの磯沼さんにとって、牛は生まれた時からそばにいた。「牛のおかげで生きてこられた」。その思いを胸に、ヨーロッパから広まった「アニマル・ウェルフェア(家畜福祉)」を実践。動物が動物らしく自然にすごせるよう配慮する。
 ホルスタイン、ジャージー、ブラウンスイス、エアシャーといった乳牛の「かあさん牛」と子牛が約90頭いるが、首を縛らず、好きに歩き回り、自由に干し草を食べ、おいしい地下水を飲めるようにしてある。牛にとって快適な環境をつくることは、最高の乳製品をつくることにつながる。一頭の牛の乳からつくる「かあさん牛のヨーグルト」は評判がいい。
 牧場内と周囲は「牧場の匂い」はあるが、不快ではない。牛の寝床や歩く場所に、コーヒーとココアの殻を敷く。消臭効果だけでなく、使用後に干し草や牛の糞尿と混ぜて堆肥にする。磯沼牧場の堆肥は家庭菜園を楽しむ人たちから好評を得ている。
 牛たちは「自動ブラッシング」で自ら身ぎれいにしているので毛づやが良い。
 出来立ての新鮮なヨーグルトやミルクを買って、ウッドデッキテラスでくつろぐこともできる。乳搾り体験など、牛とふれあえるイベントも開催している。新緑の美しい季節、牧場を訪ねる一日も良さそうだ。

■「ちちしぼり体験」

毎週日曜日に実施中。13時から(受付開始12時30分から)。700円、20人(小学生以上優先・事前電話予約可)
 ◇磯沼ミルクファーム 八王子市小比企町1625 電話番号042-637-6086 http://isonuma-farm.com
 ◇一般社団法人八王子協同エネルギー http://8ene.org

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