“お達者定期”で地域貢献 4月から・銀河鉄道バス(東村山市)

 「バスを運転したい」という夢一途に、山本宏昭さん(52=東村山市)が中古バス数台と、運転手一人のバス会社「銀河鉄道株式会社」(愛称「ぎんてつ」)を起業して17年目の春を迎えた。今は50人余りの従業員と20数台のバスを保有し、路線バス2系統と観光バス、送迎バス、観光事業を展開。4月から65歳以上の高齢者に年間9990円で、路線バス乗り放題の“お達者定期”を発売して、地域を元気にしたいと…。

白地にブルー濃淡の楕円で銀河系をイメージした車体

沿線の学校の通学バスとして好評のぎんてつバス=小平駅南口

沿線の学校の通学バスとして好評のぎんてつバス=小平駅南口

 「都のシルバーパスもSuicaも使えないバスなんて」と言われながらも、銀河鉄道の路線バスは現在、東村山青葉恩多町線(循環)と小平国分寺線の2系統を運行している。東村山ルートには市民スポーツセンターや恩多ふれあいセンター、運動公園など施設が多く、小平国分寺線には文化学園大学、中大附属中学・高校、学芸大学など学校が多い。
 どちらも大手バスの便がないルートで、平日は朝6時台から夜9時台まで10~15分間隔で運行。「時間が正確で、運転も丁寧。白地にブルーの楕円が描かれた車体が見えると、嬉しくなる」と、利用者には好評だ。運賃は大人170円、小人90円均一で、回数券と定期券も発行している。
 山本社長がハンドルを握ることもあり、「路上には“魔物”が住んでいると昔から言われているように、なにがあるか分からないので、気は抜けませんが、バスの運転士になるのが2歳頃からの夢でした」と、目尻が下がる。道路運送法や利権、営業収支などとの苦闘の連続だったが、やっとトンネルを抜け出したと言う。

3・11深夜の救出と多くのボランティアを被災地へ

観光用の昭和レトロバスの前で山本宏昭社長

観光用の昭和レトロバスの前で山本宏昭社長

 5年前の3月11日、東村山、小平市内でも震度5強の大きな揺れに、信号機は赤くなったまま、道路も大混乱。何とか運行を終えてホッとした午後8時過ぎ、小平市立3中の校長から電話があった。生徒約160人が品川にミュージカル「ライオンキング」の鑑賞会に出かけたが、帰宅できなくなってしまった。「バスを出してもらえないか」と。近隣のバス会社からは全て断られたという。電話も通じにくい中で、山本さんは即座にバス4台を手配して、9時には現地へ向かった。
 交通渋滞と帰宅困難者で混乱の深夜、翌12日午前3時に生徒たち全員をバスに救出して、小平にたどり着いたのは午前6時過ぎだった。
 5月の連休に山本さんは相馬市に出かけた。巨大地震と津波に加えて原発事故で悪臭を放つ瓦礫の中に、かろうじて残った建物の中には、救援物資が山と積み上げられたままだった。仕分けをしたり、被災者に配ったりする人手もない。
 都内にもボランティア希望者は多かったが、運ぶバスがなかった。瓦礫の中を走らせると、車体は汚れタイヤは傷んでしまう。その上放射線も浴びるわけだから車両を出すバス会社などない。そんな中、「ぎんてつ」バスは、食糧と水、救援物資も出来る限り詰め込んで被災地に向かった。帰路には避難者を乗せてきた。ボランティアを延べ2000人を被災地に運んだ。
 「あの日は忘れて欲しくない。昨年9月に亡くなった親爺も、地域振興に尽した一生でした」と、山本さん。亡父・藤夫さんは宏昭さんが1歳の頃、裸一貫で東村山へ移り住んで、小さな菓子屋から酒類販売業の免許を取り、新開地だった青葉商店会の発起人として長年会長を歴任。民生・児童委員も長年務めた。

お出かけマップを添えて外出しやすく

 山本さんが“バス馬鹿”と呼ばれて半世紀、「ぎんてつ」は4月から65歳以上に、年間9990円で路線バス乗り放題の“お達者定期”を発売する予定だ。地域の高齢者に家にこもりきりにならないよう、見どころやショッピングガイドをまとめた「お出かけマップ」も添えて、足の便としての活用をはかる。さらに、運転免許を返却した高齢者には、“お達者定期”を、1年間無料で発行。東村山市も警察署からも期待されている。「大好きなバス運転で地域を元気に、地域振興にお役に立てれば、幸せこの上ない」と、山本さんは濃紺の運転士制服、制帽姿で、ご自慢の観光用昭和レトロバス「日野RC」の運転席に乗り込んだ。
 ◇“お達者定期”は3月半ばから東村山市久米川町3・22・1同社営業所で発売?042・398・0006

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