養沢の水と苔の魅力 苔庵coquea(コケア) あきるの市

 身近にあって、時には疎まれる存在の苔だが、緑の絨毯を敷き詰めたような苔庭や苔むした岩や石、沢沿いの道などに静謐な世界が広がっている。その苔の魅力と豊富な水で地域を活性化できないかと昨夏、あきる野市養沢に、空き家をリフォームしたフリースペース「苔庵」がオープン。苔観察会やカフェ&クラフト・木工などの体験教室などが開催されている。

空き家と苔の活用で地域再生

上野先生のガイドで路上や石垣の苔を観察して歩く。左から5人目が「苔庵」オーナーの上垣智弘さん

上野先生のガイドで路上や石垣の苔を観察して歩く。左から5人目が「苔庵」オーナーの上垣智弘さん

 武蔵五日市駅から上養沢行きバスで約30分。大岳沢と御岳沢からなる養沢川沿いには、ホタル生息地やフライフィッシングエリアがあり、日本でのフライフィッシング発祥の地とも。
 木和田平(きわんだいら)バス停から徒歩2~3分、崖中腹に建つ木造平屋が「苔庵」だ。オーナーの上垣智弘さんは、養沢活性化委員会(田中守会長)のメンバーで、「20年以上も空き家だった民家を、リノベーションした空き家活用の第1号です」。
 その昔、日本武尊(やまとたける)が東征で御岳山に立ち寄ったとき、疲れた兵士たちに沢の水を飲ませたところ、たちまち疲労が回復したことから、この沢を養沢と名付けたという伝説もある養沢川。豊富な苔を産業に結びつけられないかと、「モスアリウム(苔のテラリウム)」作りや「大人の苔観察会」などを開催。カフェでは、養沢の水で煎れたコーヒーや自家製サイダーとアイスクリームを。一日に必要な10品目を盛った食養生プレートが好評だ。

苔の観察で驚きの声

樹皮に生息するホソバオキナゴケを解説する上野健先生

樹皮に生息するホソバオキナゴケを解説する上野健先生

O 「苔庵」で今月11日、小中学生の夏休み自由研究向けに、「苔観察とマイ苔図鑑作り」教室が開かれた。都内から参加した小4の根井優くんと父母、中1の山口あゆみさんと母親の2組が参加。食養生プレートを食べた後、“苔博士”こと上野健さんを講師に、苔の不思議な生態についてレクチャーを受けた。
 俗に苔と呼ばれる仲間には蘚(せん)類と苔(たい)類、ツノゴケがあり、いずれも花を咲かせず、種も作らない。水分を吸い上げる根もない。それでも世界で2万種、日本には約2000種が棲息。養沢付近では約70種が観測されるそうだ。

手にしたスギゴケモドキをルーペで観察する根井優くん

手にしたスギゴケモドキをルーペで観察する根井優くん

 上野先生のガイドで観察ウォークへ。手に苔をとり、ルーペに眼を近づけるなり、「オッすげーや!」と声を上げる優くん。まるで別物、変身したみたいだと驚く。石垣にへばりついているゼニゴケも、雌株は傘の骨を広げたような繁殖体(胞子)を掲げている。雄株の繁殖体には縁に切れ込みがない。どちらも径2~3㍉。肉眼ではキャッチできない世界だ。優くんの父の真さんは、盛んにカメラで接写していた。

夏休み自由研究でマイ苔図鑑

ゼニゴケの雌株(左)と雄株の胞子

ゼニゴケの雌株(左)と雄株の胞子

 木和田平集落から養沢川に注ぐ沢沿いを1時間余り歩いて、ヒジキゴケ、コスギゴケ、氷河の下でも20年生き抜いていたギンゴケ、木の枝に細長く垂れ下がっているキヨスミイトゴケなど20種余りを採集できた。ピンセットで1種ずつ小さな透明な袋に納めて名前を記入。優くんもあゆみさんもマイ苔図鑑を完成させてにっこり。3カ月ほど前から苔ファンになったあゆみさんの母親・亜矢子さんは 「お気に入りのトヤマシノブゴケに、自然の中で出会えて幸せ」と満足していた。
採集した苔の名前や特徴の記録作業

採集した苔の名前や特徴の記録作業

 植物生態学と苔植物学専門の理学博士であり、毎月「苔を見る旅」を開催している上野さんは「他の植物との違いに驚きがいっぱい。癒される何かが苔ブームになっているのでしょう」と言う。上垣さんは「苔パワーで地域の活性化を目指したい」と燃えている。

▽「苔庵カフェ」は日・月曜11~16時(ラストオーダー)。コーヒー400円、炭酸水250円、食養生プレート1200円(要予約)他。モスアリウムや木のマスコット作り体験教室などはfacebook養沢苔庵へ。電話番号070-4131-1076。

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