商店街の片隅に灯る 24時間営業の無人古本屋 BOOK ROAD -武蔵野市-

 大手の本屋が閉店というニュースがある中で、個人が個性的な本屋を始める話もよく聞く。店と人が本を通してゆるやかにつながり、そこがあることで街や通りにも新しい風を呼ぶような小さな本屋。BOOK ROADも、そんな新しい時代の本屋のひとつかもしれない。

本屋の新しいかたち

本を 並べる中西さん。お客さんが「勝手に」並べ換えることも

本を並べる中西さん。お客さんが「勝手に」並べ換えることも

 三鷹駅北口から北に徒歩13分。井の頭通りから北西に斜めに走る三谷(さんや)通り。昔ながらの店があるこの商店街を300㍍ほど行った左角に「無人古本屋 BOOK ROAD」(武蔵野市西久保2・14・6)がある。
 ガラス張りの小さな店は明るく、「本が並んでいる」ことが通りからはっきり見えるので、ちょっと覗いてみたくなる。3畳ほどの空間に、本棚、ガチャガチャ(硬貨を入れるとカプセルが出る仕組みの機械)、木箱が置かれている。
 店主は中西功(なかにしこう)さん(39歳・武蔵野市)。2013年4月に開店。無人というアイデアは、無人野菜販売がヒントだ。
 「本屋さんに話を聞きに行き、嫌なことってありますかと聞いたら、お客さんが店に来て、何も買わずに帰るのを見るのがつらいと。無人販売なら、それは見なくてすむ」。なるほど。ただ無人販売で心配なのは、盗まれるのでは? ということ。しかし「無人野菜販売をしている農家の人にも話を聞いたけど、盗まれないために対策したって、盗む人は盗むんだよと言われて、そうだなと」
 あらゆる面からリサーチして開店した。店の前の人通りを、朝と夜、道に立って調べた。「駅の近くじゃないほうがいい。いろんな人が通るところより、近所の人が通る道がいい。しかも店内が道から丸見えだから、安心感がある」。

ストレスを感じない店

ガチャガチャでの支払い方法の説明。知人が描いてくれた

ガチャガチャでの支払い方法の説明。知人が描いてくれた

 安全面も含め、経営側もお客さん側も「ストレスがないこと」を考えぬいた。本がびっしり並ぶ圧迫感はストレス。余裕をもって本を並べるのはそのためだ。
 本を購入するには、シールに書かれた値段(300円から1000円)を見て、ガチャガチャにお金を入れ、カプセルからビニール袋を出し、本を入れる。
 「本をむきだしで持って出たら、お金を払ったのに盗んだように見られるんじゃないかと気になる人もいる」

楽しそうに時間をかけて本を見ていたデザイン学校生の二人。「面白そうな本がたくさんありますね」

楽しそうに時間をかけて本を見ていたデザイン学校生の二人。「面白そうな本がたくさんありますね」

 24時間営業。昼間はIT関係の会社に勤めているので、週に2回、早朝か夜に来る。空のカプセルとお金を回収し、ガチャガチャを補充、掃除をして、本が減っていれば、新しい本を並べる。本は、自分の本やもらった本。お客さんが「この店に合いそうな本」とメモをつけて、本を置いていくこともある。

儲からないけど、いいこと

明かりに吸い寄せられるように夜中でも一人、また一人お客が

明かりに吸い寄せられるように夜中でも一人、また一人お客が

 開店前は周囲の人がみんな反対した。「できるわけない」。でも5年間、トラブルはない。「いま、暗いニュースが多いけど、人の善意で成立するこんないいこともある、と伝えたい」
 店を始める前には想定外だったことがある。「こんなにお客さんとやりとりがあるとは思っていなかった」。木箱に、感想を書いた手紙、「差し入れ」の果物が入っていた。冷暖房はないので、夏には誰かがウチワを置いていった。会うことのない善意の人たちとのつながりを糧に、これからもこのかたちで続けていく。

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