大らかに、自然への思い込め アイヌ刺繍の作品展

20日から聖蹟桜ヶ丘 日野の加藤さんら33人

「尖った部分は魔除けの意味」と加藤さん。全身に魔除けの刺繍を施したはんてん

「尖った部分は魔除けの意味」と加藤さん。全身に魔除けの刺繍を施したはんてん


 一針一針に自然への思いと祈りをこめて、アイヌの人々が伝えてきたアイヌ刺繍(ししゅう)。加藤佳美さん(65=日野市)が主宰するアトリエ・エム游佳(同市)では毎月末、女性たちが集っては、ちくちくと熱心に針を動かす。アイヌ刺繍の大胆な図案や自然素材の布地、針仕事に魅了された32人が、2月20日から聖蹟桜ヶ丘で開かれる作品展に、加藤さんと一緒に出展する。

「理屈ぬきにすばらしい」

教室はいつも和気あいあい。中央が加藤さん

教室はいつも和気あいあい。中央が加藤さん


 「アイヌの人たちは自然と一体になって生きてきた。私も自然が好き。理屈じゃなくて、アイヌ刺繍はいいなあと思う」。和の古布を収集して洋服にデザインするなど、布や手仕事を趣味にしていた加藤さんは、北海道への旅行などを通じて、アイヌ刺繍に興味をひかれていたという。
 夫の転勤で1998年、夫婦で札幌に移住。5年間、和布のパッチワークを習っていた縁でアイヌ刺繍の講師に出会い、その後5年間、技法をしっかり教わった。

素材・文化に伝統と斬新さ

技の一つ、カパラミプ。切った布をまつり縫いでつける

技の一つ、カパラミプ。切った布をまつり縫いでつける


 加藤さんの作品には、自然と布を愛するさまがよく表れている。アイヌ刺繍らしい力強さを見せる紺、白、赤のうち、紺は藍染めで、縫い止めるのに使う刺し子糸は白か草木染めのもの。間からのぞくピンクや紫、花柄などの布は、何年もかけて集めた古い和布だ。
 綿、絹、ウールといった自然素材にこだわるのは、色合いや風合いの良さもさることながら、アイヌの人々が自然を大切にし、虐げられてきた歴史のなかでも脈々と文化を受け継いできたことへの敬意からだ。
 またタペストリーなどの大作は、アイヌ刺繍のモチーフを、和の小布を使いながらパッチワークでつないで仕立てる。加藤さんの布とかかわってきた経験を存分に生かしたオリジナリティあふれる作品は、北海道やアメリカで開いた展示会で好評を博したという。

声に押され仲間が増えて

防寒や日焼け防止の手甲にもアイヌ文様

防寒や日焼け防止の手甲にもアイヌ文様


 北海道にいた10年間に夢中になって作りためた作品で、帰京してすぐに個展を開催したところ、アイヌ刺繍を習いたいという声が殺到した。そこで、閉じていたアトリエを10年ぶりに再開すると、神奈川や埼玉からも生徒が通ってくるようになった。
 「先生は、失敗しても『個性になる』。色合わせは『好きにやっていいのよ』って言ってくれる」と話す生徒たち。加藤さんは「アイヌ刺繍は、日本刺繍やフランス刺繍のように決まりごとが多くなくて、大らか。私の性格に合ってるのよ」と笑う。
 教室開設から5年が経ち、生徒たちの作品を集めて、東京で2回目となる作品展を開こうと考えていた矢先の昨夏、最初からの生徒の一人が病で急逝した。皆の喪失感は大きかったが、加藤さんは、彼女が残したモチーフをパッチワークして大きなタペストリーに仕上げた。20日からの展示には、この作品で彼女も参加する。
 「もっとアイヌ刺繍やアイヌの文化を知ってもらいたい」と加藤さん。バッグや一輪挿しなど、暮らしに取り入れやすくアレンジした作品が並ぶ予定だ。

北の大地の手仕事展Ⅱアイヌ刺繍
2月20~25日10~20時(最終日17時まで)
京王聖蹟桜ヶ丘ショッピングセンターAB館5階連絡ブリッジギャラリー(聖蹟桜ヶ丘駅直結)。無料。
090-2908-0722
アトリエ・エム游佳

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