現代を生きるアイヌ100人を撮る 写真家・宇井眞紀子さん 東村山市

6月8日から銀座で写真展

 「今を生きるアイヌの伴走者でありたい」。25年間、アイヌの写真を撮り続けている写真家の宇井眞紀子さん(東村山市)が、新しい写真集『アイヌ、100人のいま』(冬青社=中野区)を出版した。7年間かけ、100人のアイヌの人々を撮影。6月8日(木)から「キヤノンギャラリー銀座」(中央区)で写真展もはじまる。

共同作業で写真集をつくる

トンコリ(子ども用)を奏でる子どもを見守る母親。「持つ手が、堂に入っていて完璧なんです」

トンコリ(子ども用)を奏でる子どもを見守る母親。「持つ手が、堂に入っていて完璧なんです」

 北海道浦河町の草原に座る母と子。カラフトアイヌの伝統的弦楽器「トンコリ」を持つ息子を、優しく見守る母親。草原の緑にとけ込んだやわらかな表情に、見る側も思わず微笑む一枚だ。
 写真を撮る場所と身につける服はその人に決めてもらい、次に撮る人も紹介してもらうリレー形式の撮影。「場所や服も、その人の表現の一つです。私がそこに行って撮る。共同作業のプロジェクトにしたかった」と宇井さん。
 伝統的な衣装を着て、アイヌに縁のある場所を指定する人もいれば、アイヌを連想させない服と場所を選ぶ人もいる。
 北海道で撮影して東京に戻った後で、また北海道へ、ということもたびたびあった。ハードな移動距離に加えて、撮影場所の状況が行ってみなければわからないので、持っていく撮影機材も多く、重い。
 撮影した人たちには、それぞれ「一言」をもらい、写真集の最後に載せた。「できるだけその人に書いてもらい、後で確認した言葉です」。
 自分につぶやくような言葉、社会に対して向けたような言葉など、さまざま。写真を見て、言葉を読み、また写真を見ることで、「いまを生きる」アイヌの人たちの等身大の姿が浮かび上がる。

クラウドファンディングの支援

 宇井さんがアイヌの写真を撮るようになったのは25年前。北海道・二風谷(にぶだに)ダム建設により聖地が壊される、とアイヌ女性が訴える記事を読んだことがきっかけだ。二風谷で、自然と深く関わりながら暮らすアイヌの人々と出会い、魅かれていった。時間をかけて暮らしに寄り添い、学び、自分のことも知ってもらいながら、撮影をしてきた。
 この経験を経たからこそ、ポートレート写真集をつくることができるのではないかと思えたのが2009年。仕事の合間をぬって撮影を続けたが、2014年に、資金難でもう無理だと思ったという。あまり知られていないことだが写真家の多くは、スポンサーや助成金もなく自費で写真集を出版している。宇井さんも、それが普通と思ってやってきたが、撮影にかかる経費の負担は大きすぎた。
 そんなとき、クラウドファンディングを勧めてくれる人があり、「正直、集まると思わなかった」が、やってみると、目標額に達した。「でも、クラウドファンディングをはじめる前から、この写真集のために、1000円、2000円と手渡しでカンパをしてくれる人たちがたくさんいたことにも感謝しています」
 こうして、写真集出版では定評のある「冬青社」から出版が実現した。

第一回笹本恒子写真賞受賞

写真家の宇井眞紀子さん

写真家の宇井眞紀子さん

 今回、日本の女性報道写真家の第一人者の名を冠した「第一回・笹本恒子写真賞」(日本写真家協会主催)を受賞した。
 「賞の選考が行われているときは、まだ写真集はできていなかったので、これまでのアイヌの写真が評価されてのことですが、受賞と出版のタイミングが合いました」と喜ぶ宇井さん。






◆宇井眞紀子写真展 「アイヌ、100人のいま」◆

  ~~~ 6月10日14時~15時、ギャラリートーク開催 ~~~

開催日:6月8日(木)~14日(水)、11日の日曜日休館
時 間:10時30分~18時30分(最終日15時まで)
場 所:キヤノンギャラリー銀座
住 所:中央区銀座3-9-7トレランス銀座ビルディング1F
電 話:03-3542-1860
写真集『アイヌ、100人のいま』 冬青社 TEL03-3380-7123。縦200㎜×横225㎜、カラー写真100点。3,704円+税

写真集『アイヌ、100人のいま』 冬青社 TEL03-3380-7123。縦200㎜×横225㎜、カラー写真100点。3,704円+税

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