暮らしのそばにある戦争の傷跡

ガイドブック『八王子の戦跡』発行

市営緑町霊園の今井正己の「英霊墓」

富士森公園の戦跡を紹介するページ。ルビも多く、子どもが大人と一緒に学べるよう工夫した

 終戦75年の節目の年に、八王子市にある戦跡をまとめたガイドブック『八王子市の戦跡』が今月、揺籃社(八王子市)から出版された。八王子市の戦争に詳しい高校教諭の齊藤勉さん(62)と、小学校教諭の井上健さん(64)の監修。子どもにもわかりやすいように、フルカラーで図版も多用した。

子どもたちにも活用してもらえる本を

揺籃社主催の市民講座で講師を務める齊藤勉さん

 「子ども向けの本を作りたかったんです」と、本書編集担当の増沢航さん(38)。75カ所の戦跡、約120点を紹介している本書は、ガイドブックというより教科書のようだ。直接書き込みができるワークシートや白地図のページもある。
 八王子市の戦争については1985年刊の『八王子市の空襲と戦災の記録』(全3冊、八王子市郷土資料館編)が、八王子市空襲と戦時下の八王子市民の生活をまとめた基本的で総合的なものだった。
 しかし、編纂から40年近く経ち、掲載されている情報の中で、現在は確認できなくなっている防空壕などもある。

戦後75年の節目の出版を目指す

浅川地下壕の保存をすすめる会による壕内見学の様子

 増沢さんは、以前から齊藤さんとは交流があり「齊藤先生がお持ちの資料を本にできないか」と思っていたそうだ。
 昨秋、戦後75年の2020年出版を目指してその準備が始まった。年末から調査を開始、以前あったものが今でもあるのか確認したり、写真を取り直しに行ったり。調査開始から間もなく、新型コロナ感染拡大の時期と重なり、再調査の作業は容易ではなかった。

戦争を知る入口は「ひと」から「もの」へ

八王子市に現存する唯一の青い目の人形・メアリーちゃん(市立第八小学校)

西放射線ユーロード沿いの仏壇販売店喜久屋にある「戦災招き猫」

 普通、戦跡というと日中戦争から太平洋戦争中のものを指すことが多いが、本書では西南戦争(1877年)まで範囲を拡げた。
 また、戦争の直接の痕跡だけでなく、青い目の人形や戦災招き猫など戦争“遺物”も対象にした。追悼碑や記念碑ではなく、戦士した兵士の遺族が建てた「英霊墓」(えいれいばか)についての記述も新たな視点だ。時代や対象を拡げたことで、掲載情報のうち「3割ぐらいは新発見のものです」と齊藤さん。
 戦争が終わって75年、戦争体験者から直接証言を聞く、“ひと”から戦争を学ぶことはかなり難しくなってきた。これからは、身近な“もの”から、戦争を知ることが多くなる。
 「大きな戦跡だけでなく、日常の身近なところにある“戦争”の痕跡を見つけて欲しい」と齋藤さん。一緒に本書の監修をした井上健さんは現役の小学校教諭。小学校高学年の社会科学習では、地域のことを学ぶ。このガイドブックを片手に、保護者も一緒にフィールドワークで地域の歴史を学んでみては。
 ■ガイドブック『八王子の戦跡』齊藤勉・井上健監修、編集・発行揺籃社。B5判、112ページ、1200円+税。★本書を抽選で5冊、プレゼント。詳細は4面参照。

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