時代を超えて魅了し続ける「宮廷画家ルドゥーテとバラの物語」 9月18日から八王子市夢美術館

ルドゥーテ肖像画

仏ルイ16世王妃マリー・アントワネットやナポレオン皇妃ジョゼフィーヌの厚遇を得て、宮廷画家としてバラの美しさを、花の命を描き、「花のラファエロ」「バラのレンブラント」と称えられるピエール=ジョゼフ・ルドゥーテ(1759〜1849)。81歳の生涯で描いたバラの原画をもとに、制作された『バラ図譜』に収録された全作品170点と肉筆画2点を展示する「宮廷画家ルドゥーテとバラの物語」展が、9月18日から八王子市夢美術館で開催。

幼少から植物画に憧れ宮廷画家への道を

《ロサ・ケンティフォリア》1817年=『バラ図譜』より 点刻銅版画(多色刷り・手彩色補助)

シフォンヴェールのような花弁が幾重にも重なった華やかな表情のロサ・ケンティフォリア。中村美砂子氏著『ルドゥーテとバラの物語』((株)・青幻舎発行)によると、「ボタニカルアートの金字塔」と呼ばれるルドゥーテの『バラ図譜』の最初を飾る作品で、植物画としての正確さと、美術品としての美しさを兼ね備えているという。
200年近く前に、このように優美なバラを描いたルドゥーテはベルギーに生まれた。宗教・肖像画家であった父親の仕事を兄と手伝いながら、絵を学んだ。幼少から森や修道院の庭に咲く草花に興味を持ち、修道士から薬草の描かれた書物も見せてもらった。
13歳のとき、絵の修業でアムステルダムへ。ヤン・ファン・ファイムスの写実的かつ繊細に描かれた静物画に出会い、植物画への思いを募らせた。その後、パリで舞台背景を描く仕事をしていた兄を手伝いながら、王立植物園で植物のスケッチに勤しんだ。ある日、貴族出身の植物画家から、「植物図鑑に絵を描かないか」と声を掛けられたことからルドゥーテに、ルイ16世王妃マリー・アントワネットの蒐集室付素描画家・宮廷画家への道が開かれた。

マリー・アントワネットとジョゼフィーヌとバラ図譜

赤のラナンキュラス、紫と黄色のパンジーの花束》1821年 肉筆画=コノサーズ・コレクション東京蔵

ルドゥーテが宮廷画家に任命された1789年、フランス革命が起きたのは奇しくも、この年である。アントワネット王妃も、ルイ16世とともに断頭台で処刑されたが、ルドゥーテは王室の管理から離れ、国立となっていた自然史博物館の職員だったため、一連の革命騒動には巻き込まれず、植物画に向き合えた。
革命以後、植物愛好家として知られていたナポレオン皇妃ジョゼフィーヌからも庇護を受けた。奔放な女性のイメージが強いジョゼフィーヌだが、パリ郊外に買い求めたマルメゾン館に、世界中から多くの植物を集め、ことにバラの蒐集に情熱を注ぎ、人工交配により新たな品種も作出。ルドゥーテはその記録係として雇われた。ジョゼフィーヌが離婚で傷つき落ち込んでいるとき、ルドゥーテは彼女の好きだったバラだけの図譜を作ることを提案。ルドゥーテが描いた169点のバラは、ジョゼフィーヌが世界中から集めたり、新たに人工交配により作出させたバラであった。

ルドゥーテのバラの魅力

《ロサ・ガリカ・プロブル・ウィオラケア・マグナ》1819年=『バラ図譜』より 点刻銅版画(多色刷り・手彩色補助)

ルドゥーテによるバラや花々の図譜は、点刻彫版という銅版画技法が使われている。ビュランという彫刻刀を使い、銅板に輪郭線でなく点を刻んで描いていく。点の集散により、明暗や濃淡、柔らかな立体感が生まれる。図譜の作品はルドゥーテの描いた絵を元に、彫版師が点刻で版を制作。色刷りの後、水彩絵の具で手彩色が施されている。豊かな色彩で繊細に描かれた花たちの瑞々しい姿からルドゥーテのバラへの愛情も伝わってくる。
フランス宮廷画家、ナポレオン皇帝妃お抱えの植物画家という華やかな経歴ながら晩年のルドゥーテは、その日のパンにも事欠くほど困窮していたそうだが、彼の遺した『バラ図譜』『美花選』などの作品は、没後180年の今日も見る人を魅了して止まない。
 

 

 

■宮廷画家ルドゥーテとバラの物語

◇9月18日(金)〜11月8日(日)10〜19時(入館は18時半まで)。月曜休館。ただし9月21日(月)は開館、23日(水)休館。
◇観覧料:一般600円、小学生以上と65歳以上は300円、未就学児無料。土曜日は小中学生無料。
◇美術館内での入場人数制限を実施中。
◇八王子市夢美術館へは八王子駅より徒歩15分。バスは北口の⑥〜⑩番乗り場から八日町一丁目下車。
◇問合せ電話番号042-621-6777八王子市夢美術館

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