子どもにうたい 自分にうたう

全国150のわらべうたを集めて出版

『こまった時はわらべうた うれしい時もわらべうた』=ひとなる書房刊

赤ちゃんの目を見てうたい、子どもが遊びの中でうたい、ひとりでそっと口ずさむ。どんなときも心を照らす、わらべうた。全国から集めたわらべうたを、楽譜音源とともに集録した本『こまった時はわらべうた うれしい時もわらべうた』が出版された。編著者のひとり、大沢愛さん(東村山市)に話を聞いた。

心に届く、わらべうた

本の編著のひとり、大沢愛さん=表現教育研究所

わらべうた「上がり目下がり目」のあそび方=イラスト山岡小麦さん(本より)

平安時代の『讃岐典侍日記(さぬきのすけにっき)』(1107年頃)には、幼帝の鳥羽天皇が雪を見て口ずさんだ「降れ降れこ雪」という、最古のわらべうたとも思われる言葉が記録されている。
わらべうたは、自然や動植物、日々の暮らしへの眼差しを、短く優しい言葉と旋律で伝える。子どもはもちろん、大人にとっても、笑顔を誘い、涙を乾かし、心を温めてきた。
「泣き虫 毛虫 はさんですてろ」「上がり目 下がり目 ぐるりとまわって 猫の目」。本のページをめくると、知っているうたもあるが、まったく知らないうたもあり、楽譜を見ながらうたってみると楽しい。

子どもに伝えられること

おひざに乗ってわらべうた=舞台作品「かぜのうた」より。表現教育研究所提供

編著者である「わらべうたネットワーク うたぼっこの森」は、わらべうたに魅せられ、それぞれの活動にわらべうたを取り入れていた4人が、本をつくるために集まったグループ。平沼美春さん、彦坂早苗さん、川中美樹さん、そして大沢愛さん。子育て支援、保育現場や舞台表現などの場で活動している4人が3年かけて作り上げた。
「NPO法人表現教育研究所」代表として、子どもたちの表現活動に携わる大沢さんは、20年近く前にわらべうたの世界を知った。「ワークショップのコンセプトやテーマと考えていたことが、すべてわらべうたの中にあると感じました」と言う。「生きていく上で大人が子どもに授けられること、心と体を育て、創造力や感覚感性を育むといったことが、わらべうたの中に全部ある」「うたいかけると、赤ちゃんはまっすぐにこちらを見つめ、全身で何かを感じ取ろうとします。赤ちゃんが自ら世界と出会う、そういう力をわらべうたは引き出します」

原風景をそのままに

本には、わらべうたと楽譜が掲載され、索引に印刷されたQRコードにアクセスすれば音源も聞ける。遊び方や、言葉や歴史についての解説も書かれている。
幼児教育の場で働く人や子育て中の親、地域活動などにとって役に立つのはもちろん、わらべうたそのものを純粋に楽しめる内容になっている。
「人から人へ伝えられてきたうたなので、地域性による違いや自然に変容してきたものも多くあります。でも私たちが本を作る上でこだわったのは、暮らしの中でそのうたや遊びが生まれた元々の形を残すことでした」と大沢さん。
本の監修者の尾原昭夫さんは、教職の傍ら長い年月をかけて全国を旅してわらべうたを採譜した人。本の協力者の郷右近(ごうこん)博美さんは、「わらべうたを文化的財産として残す」という使命をもって長年活動してきた。こうした人たちの地道な仕事を大切にして、本はできた。
子どもが大泣きしたら、「いつまで泣いてるの!」と怒る代わりに、「泣き虫 毛虫 はさんで すてろ」とうたい、泣き止んだら、「今 泣いたからすが もう笑った」とうたって、子どもと一緒に笑いたい。
では、「さよなら あんころもち また きなこ」

■『こまった時はわらべうた うれしい時もわらべうた』発売記念イベント 大沢愛さんによる10〜15分ミニワークショップ。3月27日(土) 11時・13時・14時、絵本の店「トロル」(東村山市野口町1-11-4)。電話番号042-392-5304同店。本は開店時間中、購入できる。
■本『こまった時はわらべうた うれしい時もわらべうた』 わらべうたネットワークうたぼっこの森 平沼美春・彦坂早苗・大沢愛・川中美樹/編著、尾原昭夫/監修 郷右近博美/協力。B5並・144頁2色刷・本体価格2000円+税。発行/(株)ひとなる書房(電話番号03-3811-1372)

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