出会い つながる まちかど交流の場

多摩地域の「ビッグイシュー」販売員

馴染み客の間では「立川の(高倉)健さん」と慕われている金子さん

ストリートペーパーといわれる雑誌、「ビッグイシュー」はホームレスや生活困窮者の自立を応援するためイギリスで始まり、日本では2003年に創刊された。全国100カ所以上、多摩地域でも三鷹、調布他7カ所ほどで専属の販売員が1冊450円(うち230円が収入に)で路上販売している。

常連さんに会いたくて

「ビッグイシュー」の表紙は、国内外の著名人や俳優の他、毎号テーマの違う特集に関連したものなど多彩。作家の雨宮処凛さんや経済学者の浜矩子さんの連載もある

立川駅の北口、天気が良い日の昼間、ペデストリアンデッキ通路の左手奥に、1人の男性が立っている。「ビッグイシュー」の新刊の他、バックナンバーも約20種類程を持って。A4判30頁ほどの手軽なボリュームの雑誌だが環境、貧困や格差、国際問題など海外の記事もあり、読み応えがある。全頁カラーで写真が多いのも良い。
男性はこの道17年のベテラン販売員の金子さん(74)だ。「最近はコロナ禍で人通りが少なくて、売り上げもかなり減っちゃって」と、ちょっと残念そう。
19年前の脳梗塞の後遺症もあり、1日4時間ほど立ちっぱなしで販売しているのは体力的にもキツイ。それでも雨が降らない限りほぼ毎日、立川駅頭での販売を続けているのは「もしお得意さんが来てくれた時、自分がいなかったら申し訳ない」から。1日号と15日号、月2回の発行に合わせて友人の分も購入していく10年来の女性客や、最近“常連さん”になった大学生など、顔見知りの固定客は、多い時は80人ぐらいいた。

販売員との出会いが人生を変えた

山本さん(左)との出会いは「運命」のようなもの、と金子さん(写真は2018年春頃)

金子さんとの出会いが人生の大きな転機になった人がいる。立川市議会議員、山本洋輔さん(30)だ。山本さんは高校卒業後立川の予備校に通っている時、金子さんと出会った。受験勉強一色の無味乾燥な生活の中で「金子さんは貴重な話し相手だった」。始めは挨拶を交わす程度だったが、金子さんを通して「ビッグイシュー」の支援ボランティア活動に参加、大学入学後も4年間続けた。
社会人になって数年が経った頃、久しぶりに参加したボランティア仲間の飲み会の席で、市議会議員の話を持ちかけられた。山本さんを推薦したのは金子さんだった。その理由を聞くと「学生時代から一緒にやってきて、彼の真面目さ、誠実さを知っていたから」と、金子さんは穏やかに、言葉少なく答えてくれた。

出会い、交流が楽しい

府中のけやき並木通りで販売員デビューした岡戸さん。夏は木陰で涼しかったが、これから寒くなるとちょっと心配

府中駅出口6番からけやき並木通りに出て、遊歩道の郵便ポスト近くで販売員をしている岡戸さん(69)は、今年3月から始めた“新人さん”だ。それでもこの半年の間に、通りがかりに声をかけてくれたり、ちょっと立ち話をしていったり、顔なじみの人が何人もできた。「家にずっと1人でいて、たまに1人で散歩するより、道行く人と挨拶を交わしたり、顔馴染みになった人とおしゃべりしたり、そんなことが楽しい」と岡戸さん。
多摩地域では他に、立川駅南口、国立駅南口でも販売員がいる。もし見かけたら「こんにちは」の挨拶から始めてみてはどうだろう。新しい出会いが、次の何かに繋がるかもしれない。

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