バイオリンに魅せられて 少年時代の夢を実現

手づくり弦楽器展 2021年1月9日から八王子市で

子どもの時に体験した感動が忘れられず、夢を実現させ、それを続けている人がいる。八王子市在住の市川武邦さん(79)だ。市川さんの提琴工房クレモーナを訪れた。

バイオリンの街クレモナ

工房で作業工程を説明する市川さん(撮影時だけマスクをはずしてもらいました)

元八王子にある、市川さんの自宅に併設された半地下の「提琴工房・クレモーナ」。25年前に開いたというその工房の名前は、イタリア北部の都市・クレモナに由来する。クレモナは17世紀から18世紀にかけて、有名な楽器製作者アントニオ・ストラディバリウスが工房を構えていた歴史ある街。
また今年4月、クレモナ在住の日本人バイオリニストが、新型コロナ感染患者や医療従事者のために、地元病院の屋上でバイオリンを演奏した動画がユーチューブで配信され、世界中で話題と感動を呼んだ。
「イタリア語の発音を活かして、工房の名前は『クレモーナ』にしました」と市川さん。工房の外観は古い土蔵のような純和風の構えだが、1歩室内に入ると、市川さんの手作りのものや思い出のバイオリン、シルクロードを旅して世界各地で買い求めた民族弦楽器などが壁一面に飾られ、そこはまさにジブリ映画「耳をすませば」に出てくるバイオリン工房の雰囲気そのものだった。

音と形の美しさに感動

「やりたいことは、まだまだいっぱいある」と話す市川さん

1941(昭和16)年生まれ。多感な小中学校時代は敗戦後間もなく、世の中のあらゆる物資が不足し「モノに飢え、欲望がとぎすまされていた」。そんな時代に、音楽の時間に先生が弾いてくれたバイオリンと出会った。
「その時の衝撃は今でも忘れられない」と市川さん。「繊細な音色といい、洗練されたフォルムといい、こんな美しいものがこの世の中にあったのか!」。中学生の市川少年は、それ以来すっかりバイオリンの虜になった。
もともと手先が器用で、常に折りたたみの和式小刀・肥後守(ひごのかみ)を携帯し、様々な木工細工を作っていた。そんな工作少年が、人生の折り返し地点の50歳から、本格的にバイオリン製作を始めた。現役時代、小学校の校長だった時に、同僚から日本人バイオリン製作者の本を見せてもらい、その人のもとに通い技術を学んだ。

90歳まで続けたい

バイオリンだけでなく、他の弦楽器も製作。写真のモンゴルの民族楽器「馬頭琴」はコンクールで入賞するほどの腕前

市川さんがバイオリン1挺を完成させるのに、だいたい3カ月かかる。まだまだ満足できるものではないという。来春80歳。かのストラディバリウスは93歳までバイオリンを製作し続けた。「私もせめて90歳ぐらいまでは、作り続けたい」と、市川さんは意気込みを語った。
「かつての教え子たちに会えたら嬉しい」と、今回初めて作品展を開く。2021年1月10日14時から、展示楽器によるミニコンサートも予定。
■手づくり弦楽器展 バイオリン・ビオラ・チェロ・馬頭琴 2021年1月9日(土)〜18日(月)10時40分〜17時(最終日16時まで)、村内ファニチャーアクセス「サロン樫の木」(JR八王子駅北口、八王子オクトーレ・郵便局前から無料シャトルバス)。電話番号042-691-1211村内ファニチャーアクセス

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