vol.12 石薪窯パン 病みつきの味(青梅市富岡)

焼き上がったパンを窯から取り出す渡辺芳子さん

焼き上がったパンを窯から取り出す渡辺芳子さん

 「麦」と書いて「むじ」と読むその店は、薪窯で焼いたパンやケーキが評判の、静かな里山に佇むパン屋さん。皮はパリッと中はもっちりしたパンは、見た目は無骨だが病みつきになる美味しさ。麦をむじと読むのは、店を切り盛りする渡辺芳子さん(74)の出身地、沖縄の読み方という。
 1964年に就職のために上京した芳子さん。東京で知り合った夫が彫刻家で、アトリエ兼住居として約30年前にこの地に越してきた。旅先の八ヶ岳で出合った薪窯に惹かれ、「自分もやってみたい」と、帰宅後、庭の隅に夫に石窯を作ってもらったのが始まりだ。
 窯に火を入れる火曜日と土曜日にはスタッフも来て、朝4時半ごろから薪を焚いて窯を暖め、約3時間後に火を落とす。まず最初に焼くのはパン。続いて、窯の温度が下がるのに合わせてケーキ、ラスク、クッキーの順に焼いていく。
 焼き上がりに合わせて来る常連客もいて、外のベンチでのんびりと待っている。「焼きたてのパンをムシャっとほおばる夢がかなった!」と喜ぶ人もいるという。
木々に囲まれた石窯のある小屋。石窯同様、夫の手作りだ

木々に囲まれた石窯のある小屋。石窯同様、夫の手作りだ

 パンはプレーンとレーズンの2種。原料は強力粉とふすま、三温糖、イースト、塩。卵も乳製品も、着色料、香料、甘味料、保存料も使っていない。
 窯でパンを焼き始めて20余年。どの行程も手探りで、失敗や発見を繰り返しながらたどり着いたもの。「真似はしない」のが信条だ。
 時間に余裕がある日には、庭で仲間たちと育てる野菜やハーブの料理を作ったりピザを焼いたりすることも。低温で煮込む肉料理など窯で作るレシピはたくさんあり、芳子さんは「各国料理を勉強して、うちのパンに合う料理もこの窯で作りたい」と思っている。
 上京して50年。「東京の山奥でパンを焼いて生計を立てているとは思いもしなかったけれど、これからも、この窯から広がる可能性を追求していきたい」

■石薪窯パン&ケーキ麦(muji)
常福寺入り口バス停下車7~8分。10時~日没。月曜定休。電話番号:0428-74-4525

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