vol.3 コンニャク作りの技、伝えたい(檜原村下川乗)

水につけながらひたすらすりおろす。かつてはビニール手袋はなかった。「かゆいのなんて我慢するしかなかった」

水につけながらひたすらすりおろす。かつてはビニール手袋はなかった。「かゆいのなんて我慢するしかなかった」

 都内唯一の村(島嶼部を除く)である檜原村の特産品の一つに、コンニャクがある。同村主催の体験型教室「森の学校」でコンニャク作りの講師を務めるなど、“名人”として知られる清水ヒロ子さん(78)を下川乗(しもかわのり)地区に訪ねた。
 下川乗の上流、同村人里(へんぼり)で生まれ育ったヒロ子さん。「10歳で終戦を迎えたから食べ物が無かったのね。どこの家でもコンニャク芋や麦を育ててた。集落に水車小屋があって、粉をひいてうどんを打ってたの」
 当時は、牛や馬が武蔵五日市から荷物を運んできた。「配給のお米や畑のものでは足りないから、春になると山菜を山に探しにいくの。行きは元気なんだけんど、どこを探してもあんまりとれないの。そうするとかったるくて、一度座りゃ座ったまま、お腹が空き過ぎて起きれなくなる」
5人きょうだいの2番目のヒロ子さん。うどんやまんじゅう、コンニャクなど、見よう見まねで作り方を覚えていったという。「体にしみ込んでいるから、鍋と材料さえあればいつだって作れる」

収穫したコンニャク芋を洗う

収穫したコンニャク芋を洗う

  裏の畑で収穫した丸々としたコンニャク芋の土を洗う。この際、赤い芽はしっかり取らないとえぐみが残ってしまう。鉄鍋に水を入れ、コンニャク芋をすりおろす。
 家の裏のかまどに鉄鍋を載せる。「今日は真っ白でいいのが出来そう」。ヒロ子さんは手早く薪を割り、小枝を探して火をつける。
 こげないようにまぜながら火にかけること約1時間。ぷるぷるになったところで火から降ろし、お湯で溶いた精製ソーダを加えると、真っ白だったのがほんのり灰色になり、固まる。鍋の水を入れ替え、灰汁抜きのためまたゆでる。

立派なコンニャクの出来上がり

立派なコンニャクの出来上がり

 出来たてのコンニャクを薄く切って、ワサビ醤油でいただくと……舌の上でとろけそうな食感、でも適度な弾力があり、つるつるとのどごしが良くいくらでも食べられそうだ。
 子ども達は独立、今年6月には夫が亡くなり今は一人で暮らす。コンニャク作りやソバ打ちを教えることが刺激になっているという。「若い子達が大勢来てくれると、賑やかではりがある。生きてきて身についたものをずっと伝えていきたい」

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 牛や馬が行き交い、水車が回る――。そんな光景を浮かべながら下川乗を後にしました。ヒロ子さんの機敏な動きは、戦中戦後の食糧難の時代を乗り越える中で身についたもの。レシピやマニュアル頼みの我が日常を恥じつつ、今のうちに先輩方からたくさん教えてもらわねば、と思いました。

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