vol.13 村の歴史伝える森のソバ屋(檜原村小沢)

OLYMPUS DIGITAL CAMERA 檜原村の観光名所、払沢の滝の駐車場を過ぎ、山道をぐんぐん上がっていく。やがてガードレールもなくなり、この先に本当にソバ屋さんがあるのかと不安に駆られると、ようやく看板が見える。森の中に1軒、ポツンと佇む古い家屋が「そば処みちこ」だ。
 瀬戸沢と名の付いたこの場所に400年以上前に建てられたと伝えられるこの家は、村の東西を貫く浅間尾根伝いに位置するため、尾根道が村人の生活道路だったころは馬方と馬の休憩所となり、木炭や雑貨の問屋などとして大いに賑わったという。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA 店を切り盛りする濱田美知子さん(66)は村内の神戸(かのと)で生まれ、小沢で育った。母の生家であるこの家には、祖父母に会いによく遊びに来ていた。
 祖父からは、囲炉裏の灰に火箸で字を書いて漢字を教えてもらったこともあった。周囲から「仙人」とあだ名されていた祖父は「ここで過ごすのが一番」と1990年に88歳で亡くなるまでこの家で一人で暮らした。電気も電話もテレビもなく、明かりはランプだった。今もそのランプがぶら下がっている。
 その後10年ほどは空き家だったが、もともと調理師だった美知子さんが「このままでは廃れてしまう」とそば屋を開くことに。電気や水道を引き、畳を入れ替え、厨房を新設して2000年春、「そば処みちこ」を開いた。
 以来14年。来客は全国各地から訪れ、新緑や紅葉の季節には開店前から行列ができる。
OLYMPUS DIGITAL CAMERA 日の出町の自宅で打ったソバを持って車で店に“出勤”し、瀬戸沢の水で茹でる。「空気もいいし、水も冷たいからキュッとしまる」という。ソバは喉越しが良くて、スルスルっと進む。サクサクした旬の野菜の天ぷらと季節の小鉢2品もついている。
 建物の維持管理は容易ではなく、屋根はトタンをかぶせているが、風の強い日などは屋根裏の茅(かや)が落ちてくるので掃き掃除は欠かせない。茅の中の虫除けのため、囲炉裏に火を入れて定期的に茅を燻さねばならない。
 それでも美知子さんは「空気も水も美味しくて、のびのび出来る。やっぱりここにいるのが好き」。12月以降、店は春まで休業する。「お彼岸のころ、また山に戻ってくるのが楽しみ」だという。

 「そば処みちこ」

 4月~11月の土曜・日曜・祝日11時~15時半(5月と8月は木曜以外営業)。
檜原村小沢4063、電話番号:090-7415-3854

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