vol.14 奥多摩産シカ肉、猟師の味で 奥多摩町原

看板メニューの鹿肉定食(税込み1500円)。付け合わせは旬の野菜の煮物とけんちん汁。ボリューム満点だ

看板メニューの鹿肉定食(税込み1500円)。付け合わせは旬の野菜の煮物とけんちん汁。ボリューム満点だ

 東京産のシカ肉を、最近話題のジビエ(フランス語=狩猟で食材として捕獲された野生の鳥獣)料理ではなく、地元の猟師に伝わる伝統の味付けで――。
 青梅線奥多摩駅からバスで約20分。奥多摩湖畔の食事処「丹下堂」は、奥多摩湖(小河内ダム)の建設で湖底に沈んだ旧小河内村の湯場(ゆば)出身の丹下榮さん(72)が営む。
 奥多摩町は山林を有する全国の他の自治体同様、サル、シカ、イノシシなどが、森の下草や木の皮を食べ尽くしてしまう獣害が深刻な問題になっている。駆除で射殺したシカ肉を有効活用して観光資源にと、2006年、町主導で鹿肉処理加工施設を建設。加工した肉を町内の民宿や旅館、飲食店などに販売したり、シカ肉カレーなどを商品化したりしてきた。
店を切り盛りする丹下明美さん

店を切り盛りする丹下明美さん

 丹下堂でも5年前からメニューとして提供することに。店を切り盛りする妻の明美さん(68)が地元の猟師に教わった調理法はいたってシンプルだ。獣肉特有の臭みをなくすために流水で洗いながら血を抜き、味噌と醤油、生姜を合わせたタレに漬け込む。
 店の常連である釣り客、登山客、湯治客のみならず、最近では、ネット上の口コミを読んで遠路はるばるやってくる客も多く、看板メニューの一つになっている。「獣肉なので好みは分かれますね。はじめはこわごわと口にする人もいますが、肉の柔らかさに驚きながらパクパク食べてくれる方も多い」と明美さん。
 鹿肉定食を食べてみた。〝牛肉とクジラ肉の中間〟と称されるように、とても柔らかい。脂身が少なく、生姜が香るその味付けは白いご飯が進む。「猟師は山の中でこの味を食べてきたのか」、そんな光景に思いを馳せると、なんだかワイルドな気持ちになって自然の中で生きる力が湧いてくるような……。
奥多摩湖畔に建つ丹下堂

奥多摩湖畔に建つ丹下堂

 横浜から奥多摩町に嫁入りして42年余。「はじめは街が恋しかったけれど、いつの間にか山が心地よくなっていた」と明美さん。昨年6月に病気が悪化して入院と治療で2カ月間食堂を休みにしたが、常連客から「まだまだ元気でいてね」と言われたという。
 「わざわざ来てくれる人がいる。体が動くうちは自分のペースで頑張っていきたい」と話す。
 

丹下堂

10時~19時。木曜定休。奥多摩駅からバス「奥多摩湖畔・倉戸口」下車、徒歩1分。駐車場10台。
鶴の湯温泉入浴料・大人750円。電話番号:0428-86-2235

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