vol.2 人と人つなぐモノレール(檜原村藤倉)

モノレールに乗り込む小泉肇さん

モノレールに乗り込む小泉肇さん

 ガガガガガガガガガ――、杉林に響き渡る大きな音の主は、福祉モノレールのエンジンだ。木々の間を縫うように伸びる1本のレールの上を進んでいく。
 檜原村は2003年、車が入ることの出来ない急峻な山間部で暮らす高齢者のため、約9000万円かけて村内5カ所にモノレールを設置した。村内には、幅1㍍ほどのつづら折りの道の先で暮らす高齢者の家が十数軒あるからだ。
 のんびりと進むがところどころ急勾配があり、シートベルトはないので、手すりをしっかりと握らねばならない。

杉林の間を縫うように進む

杉林の間を縫うように進む


 4路線がある藤倉地区を訪ねた。村によると、高齢化率43・2㌫の同村にあって藤倉地区の高齢化率は47・6㌫と村内の地区で最も高い(1月1日現在)。
 この日は、地区の民生委員を務める小林茂雄さん(68)の高齢者への安否確認に同行するため、モノレールに乗った(通常は住民以外の利用は禁止されている)。

郵便配達のバイクが山間の道を行く

郵便配達のバイクが山間の道を行く

 揺られること約1時間。うっそうとした杉林から急に視界が開けた。終点だ。ここで姉と2人で暮らす小泉肇さん(83)は、10日に1度ほどこのモノレールに乗ってバス停に向かい、町に買い物に出かけている。以前は、重たいプロパンガスや家を修復する際に必要な材木なども含め、生活に必要なものはなんでも背負って片道1時間かけて運んだという。「こんな便利なものが通るとは夢にも思わなかった。命綱みたいな存在だ」
 小林さんによると、かつて集落では誰もが自分の得意分野を生かしながら助け合っていたという。「それがいつの間にか業者任せになって、お金がないと回らなくなっちゃって。そしたら、声を掛け合うのも減っちゃった」

小林茂雄さん

小林茂雄さん

  本業は大工だが、3年ほど前に仕事中に事故にあって以来、本格的な大工の仕事は控えるようになった。それでも、地区内の高齢者宅へは変わらず訪ね歩いている。「ここにいるとなんでもやんなきゃしょうがないじゃん。みんな、俺が小さいころ世話になった人ばっかり。今度は俺が動く番。動ける人間が動かないと、集落が成り立たないじゃん」と笑う。

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都内では、街並みはめまぐるしく変わるが、小泉さん宅から眺める風景は、数十年間変わらない。変わったのは木の種類。「今はスギ山だらけだけんど、昔はぞうやま(雑木林)だったから山の中はもう少し明るかったな」

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