vol.1 経済学者は「冷静な頭脳と暖かい心」を

初対面の人から「株価はどうなりますか?」「円相場は?」などと聞かれることがままあります。私が経済学の研究者と知っての問いです。経済学は、株で儲ける、為替で儲ける「お金持ちになるための学問である」と思われているようです。
経済学は、もとよりそうした学問ではありませんから、これらの問いには「分かりません」とお答えする以外にありません。それでも、時に「長期的には……」などと答えてしまうことがあります。長期的にはこうなるだろうと、経済学の力を借りて予測することはある程度可能だからです。
ただし、こういう答えをすると、ケインズ(1883〜1946)大先生から「長期的には人は皆な死ぬ」と冷やかされるかもしれませんが……
経済学はどういう学問であるか、経済学を学ぶのに必要なことは何か。これも経済学の大先生(ケインズの先生でもありました)マーシャル(1842〜1924)大先生の有名な言葉があります。「冷静な頭脳と温かい心(cool head but warm heart)」というのがそれです。
「ロンドンの貧民街を見て、人々を貧困から救済したいと思い経済学の研究を始めた」というマーシャルの経歴にふさわしい言葉と言えましょう。1885年、ケンブリッジ大学経済学教授に就任した時の記念講演での発言と聞きます。
現実にそうできるかどうか必ずしも自信はありませんが、次回以降この連載では、暮らしの中の経済に関する様々な問題を、暖かい心で、しかし冷静に考えていきたいと思っています。
(暮らしと経済研究室 山家悠紀夫)

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