vol.25 「無料でやることに意味がある」(宮城県・山元町)

 前月に紹介したNPO法人「ささえ愛山元」は、震災後の津波で1カ所の事業所を失い、もう1カ所も1階が冠水した。それでも震災直後から被災した人々を支える活動を行ってきた。さらに、昨年8月からは被災住民らに無料で憩いの場を提供している。

「ほっと活動」は被災した民家で

「陽だまりの会」で制作中の参加者

「陽だまりの会」で制作中の参加者

 被災した住民らが集える場は、移転した「ミニホーム・愛広館」(以下、愛広館)が以前運営されていた場所。築30年ほどの民家を開放して行われている「ほっと活動」は、現在、パソコン教室、フラワーアレンジメント、オカリナ、囲碁・将棋・麻雀教室などのグループがあり、それぞれ週1回~月1回などのペースで活動している。
 この日は古布で手作り品を作るグループ「陽だまりの会」が活動していた。全国から送られた支援の布が主な材料だ。着物や帯などをほどいて小袋、帽子、人形、吊し雛などを作る。メンバーは10人。週1回の活動だ。作品は活動を見学に来た人たちに販売している。
 佐藤繁子さん(70代)は「私、津波で家もそうだけど全部流されたの。仮設に昨年末までいたんだけどしゃべることも少なかった。今はここに通うことが生きがい」と笑顔で教えてくれた。
 愛広館の中村怜子理事長は「このあたりは花釜地区というのですが、地区の集会所も全壊したため、戻って来た住民が集う場所がなかったんです」と説明した。

NPOだからできることがある

作品の吊し雛を飾る中村さん

作品の吊し雛を飾る中村さん

 実は中村さん、被災直後から仮設住宅で「パラソル喫茶」を20回以上開催して気がついた。
 「被災した人たちが集まっておしゃべりする場が必要ということです。仮設の部屋から出て被災者同士が自然に支え合うことができる場です」。支え合うというのはお互いを「気にかける」ということ。「ここで顔見知りになって、お互いが誰かの手が必要になった時に助け合うことができればいいですね」。中村さんの狙いはそこにあるようだ。
 ほっと活動は「読売光と愛の事業団」の支援を受けて実施しているので、利用料は無料だ。だが、法人の持ち出しは少なくない。
 
「ほっと活動」が行われている民家(もとの愛広館)

「ほっと活動」が行われている民家(もとの愛広館)

「でもね、無料にすることに意味がある」と中村さん。理由は津波で亡くなった夫だ。中村さんが津波に呑み込まれて首まで水に浸かりながらも助かったのは、夫のコップが落ちた音で意識が戻ったためだ。コップの近くに氷砂糖などが入った缶があり、糖尿病の中村さんの命を救ったという。「見えない力で助けてもらったから、今度は恩返しをするの。先が長い歳でもない(74歳)から、ちゃんとやらないとパパに怒られるわ」
 ゼロから再スタートを切った人の優しさと強さが見事だ。
 (介護福祉ジャーナリスト・甘利てる代=八王子市)

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