vol.52 高台で再スタート、新しい「すみちゃんの家」

 東日本大震災の被災地の現状を追う取材を開始した5年前、被害の大きかった宮城県東松島市で「すみちゃんの家」に出会った。まだ東名運河には津波の爪あとが生々しかった。今年11月上旬、新しい「すみちゃんの家」が高台(同市野蒜ヶ丘2丁目)に完成した。

新しい「居場所」

開所式で挨拶する伊藤壽美子さん 

開所式で挨拶する伊藤壽美子さん 

 2015年の5月に復興した仙石線。高台に移転した東名駅を過ぎると間もなく線路脇に見えて来たのが新築の「すみちゃんの家」(NPO法人のんびーりすみちゃんの家)だ。震災後、「すみちゃんの家」はいち早く改修を行い、被災した場所(東名地区)で事業(デイサービスと宅老所)を再開。加えて月に1回の自主サロンも開催してきた。
 だが、伊藤壽美子代表は常々「終(つい)のすみかとしてうちを選んで下さった方々の命を預かっていることを考えるとできるだけ早く高台に移転したい」と言っていた。
 念願が叶い2016年5月に高台の宅地受け渡しが行われ、工事は急ピッチで進んだ。11月1日、新「すみちゃんの家」の開所式が行われた。地域から大勢の人が参加した開所式で、伊藤壽美子さんは震災以降の胸の内を語った。
再スタートをきった「すみちゃんの家」

再スタートをきった「すみちゃんの家」

 「被災は本当にきつかった。でも、震災直後から東名地区にどうしたら人が戻ってくるかを考えていろいろなことをしてきました。私もですが、東名に長年住んできて、もうどこへも行けない人のための居場所になるように建てました」
 新築の「すみちゃんの家」は2階建て。住居部分は2つのユニットから成る。1階はホールと1ユニット9部屋、2階も同様に9部屋。事業は宅老所(契約で実施する入居サービス)であり、24時間365日の継続した支援を提供する。他に訪問介護事業、居宅介護支援事業所も併設する予定だ。

いつでも「お茶っこ」できる場所に

野蒜ヶ丘2丁目は建築ラッシュ。だんだんと町の形になっていくのだろう

野蒜ヶ丘2丁目は建築ラッシュ。だんだんと町の形になっていくのだろう

 野蒜ヶ丘2丁目は、今建築ラッシュだ。既に完成した小学校はすみちゃんの家から300メートル先にあり、今後はスーパー、郵便局、歯科医院なども建設予定だという。
 また、東松島市社協の斎藤寿朗副会長は「すみちゃんの家が被災後から、毎月サロン活動を行い交流を絶えさせなかったことが地域に活気を届けてくれました」と、改めてすみちゃんの家のこれまでを振り返った。
 壽美子さんは「ボランティア活動からスタートしたので居場所づくりにこだわっています。新しい場所でもボランティアセンターのようなものを作りたいです」と言い、「いつでも開放して、お茶っこ(お茶飲み)ができるようにします」と晴れやかだった。
 新しい町はこれから生まれる。どんな町になるか、作るのはやはり「人」なのだ。
 (介護福祉ジャーナリスト・甘利てる代=八王子市)

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