vol.21 特養「マリンホーム」の再出発

東日本大震災ですべてを流出した、宮城県岩沼市の特養施設「赤井江マリンホーム」(社会福祉法人ライフケア赤井江)が、新しい施設で再スタートを切った。

暮らしを取り戻す

もとに還った仏像

もとに還った仏像

2014年1月24日、特別養護老人ホーム「赤井江マリンホーム」(以下、マリンホーム)の落成式が行われた。東日本大震災発生時、海からわずか250メートルほどの距離にあったマリンホームだったが、利用者と職員144名が全員無事という奇跡的な脱出を成し遂げた。
だが、全員無事の喜びとは別に、仮住まいの生活を余儀なくされてきた。震災から3年目を迎えようとする今年、念願だった新ホームが完成、再スタートを切った。
地上4階建ての建物には玄関が2つ。建物に向かって左が特養玄関、右側がデイサービスや地域交流室などの入り口である。内部は繋がっていて行き来が自由だ。建物を上空から見れば、大きなH文字のようで、行き来可能な部分が横に渡っている。
特養50床・ショートステイ14床と地域密着型特養「恵み野」29床が特養部分。右玄関から入るとデイサービスセンター「くろまつ荘」と地域交流室、介護支援センター、地域包括支援センターがある。災害対策として自家発電装置も備えている。
特養は多床室が中心だ。4人部屋、2人部屋で個室はない。居室内は広い。広いだけではなく、ベッド間の仕切りを工夫しているため個室に近い環境になっている。その理由を小助川進施設長はこう言った。
「全室個室の新型ユニットにすると、利用料が支払えないという理由で入居ができない人が出てきます。それは避けたかったんです。幸い、再建は以前の状態に戻すという条件がついていたので新型特養にしなくても許可されました」
ただ、多床室といっても快適性を考慮して、限りなく個室に近づけようと考えたという。
岩沼市で最初にできた特養として、また、復興に向けて多くの市民の支援を得た施設として、「ご恩返しがしたい」と小助川さんは力強く言った。

もとの場所に還った仏像

1月24日 落成式

1月24日 落成式

もとの暮らしを取り戻す工夫がいくつかあった。1階の施無畏堂(せむいどう)だ。ここは和室で、奥には大きな仏像が設置してある。これは被災した施設にあったもので、津波が押し寄せた際も遠くに流されることなく建物の後ろに佇んでいたもの。仏像が守ってくれたから被害がゼロだったという人もいた。「おさまるべき場所に収まった仏像を見ると、やっともとに戻れたんだと思います」と、1人の職員が感無量な面持ちで語ってくれた。

新しくなった赤井江マリンホーム

新しくなった赤井江マリンホーム


こうして少しずつ震災前のマリンホームの姿を取り戻していた。
次号ではマリンホーム再建記念の「記録集」を紹介する。
(介護福祉ジャーナリスト・甘利てる代=八王子市)

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