vol.34 復興住宅の「孤独死」に立ち向かう人々

 東日本大震災で大きな被害を受けた東北三県(岩手・宮城・福島)で、災害公営住宅(復興住宅)への入居が本格化している。一方、復興住宅の入居者のうち、65歳以上の高齢者が占める割合が高いことが指摘されている。高齢化率が高いほど「孤独死」への対応策が問われる。宮城県方式を取材した。

700人を超える支援員

復興住宅への入居が進む一方で、仮設には自力での自宅再建等が難しい高齢者が残っている

復興住宅への入居が進む一方で、仮設には自力での自宅再建等が難しい高齢者が残っている

 「復興住宅はその多くが高層の建物です。縦に伸びた集合住宅に入居した高齢者は、一歩外に出たら近所の人と顔を合わせることができた仮設と違って、人と接触する機会が激減します。また、外出が面倒になり孤立しやすくなります」
 仮設から復興住宅への移転は決してゴールではなく、新たな課題を生むことを指摘したのは、宮城県サポートセンター支援事務所の鈴木守幸所長だ。
 宮城県は被災者支援の施策として、震災から半年後、仮設やみなし仮設などで避難生活を送る住民への「寄り添い型見守り」支援を行うために、県内の13市町の約60カ所にサポートセンターを設置した。各市町は運営を社会福祉協議会、社会福祉法人、NPOなどに委託。運営団体は巡回して被災者支援をする支援員(自治体によって名称が異なる)を公募した。なお、各サポートセンターのバックアップ役であり、支援員の研修などを行っているのが県サポートセンターだ。
仮設で定期的に開催されている手芸活動。復興住宅に移ってもこういう「場」があるとは限らない

仮設で定期的に開催されている手芸活動。復興住宅に移ってもこういう「場」があるとは限らない

 「各サポートセンターに所属する支援員は県内で700人を超えます。その特徴は、多くが地元住民であるということです。支援員は市民感覚を持っているので、避難者の不安や課題を共有しやすくタイムリーな支援につなげることができます」と鈴木さん。
 公募で集まったのは福祉の専門職だけではなく、会社員や美容師といった人もいるなど幅広い。接客業だったという支援員のケースでは人の話を丁寧に聞けるという強みがあり、地元住民という共通項は親しみやすさを生む。

孤独死を予防する

宮城県サポートセンター支援事務所所長 鈴木守幸さん

宮城県サポートセンター支援事務所所長 鈴木守幸さん

 例えば、震災で家を失い、船を流出して漁師としての仕事も失い、生きがいが見つからない人はどうなるか。「アルコールに頼ることが多い」とは鈴木さん。仮設でも復興住宅でも大きな問題だ。アルコールと孤立が組み合わされば「孤独死」に結びつくことも目に見えている。
 そこで力を発揮するのが支援員だ。アルコールを唯一の癒やしに仮設に閉じこもっている人にアプローチする。地元だから毎日通いながら話しを聞く。そして「しらふの時に話しを聞きたい」と提言する。「わかった。あさって来てくれ」と言われてその通りにすると、飲まないで待っていてくれることも。
 日常を把握していることで自立への足がかりを一緒に模索できるのも、地元住民である支援員の強みだ。さらに必要であれば、行政の福祉窓口につなげることもある。「サポートセンター発足時から支援員のこまめな対応があったので、県内仮設での孤独死はなかったと把握しています」と鈴木さん。だが、復興住宅への入居が加速すれば、孤独死が増える懸念もある。仮設と違い、復興住宅は見守りなどのケアが手薄になることが予測される。復興住宅が整備されれば問題が解決したと思われがちだが、入居者の高齢化はさらにすすみ、地域に居場所がなければ孤立化は避けられない。高層の復興住宅からもとの仮設に交流を求めて通う人もいるなど、今後の課題がみえてきた。
 支援員を含めた地域福祉力が求められている。
 (介護福祉ジャーナリスト・甘利てる代=八王子市)

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