古代から人が住む町
西武池袋線の秋津駅南口を降りて、徒歩15分ほどの明治薬科大学へ向かって歩く。空堀川が流れ、住宅街に畑も見られる風景に、現代の武蔵野を感じる。
このあたりは、清瀬市野塩。縄文から平安時代にかけての遺跡があり、古代から人が住んでいたことがわかっている。その頃に住んでいた人々が貯蔵していたのか、海塩が掘り出されたことから、「野塩」と呼ぶようになったと伝えられている。
薬学の歴史を見て学ぶ
明治薬科大学に着いたら、正門脇の守衛さんに声をかけ名前と時間を記入すると、薬用植物園と明薬資料館の見学ができる(入場無料)。薬用植物園は小ぢんまりしていて、薬草の効能などの説明もあり、散策を楽しめるようデザインされている。
甘草(かんぞう。マメ科)、当帰(とうき。セリ科)など、漢方薬で馴染みのある薬草から、ミント、ローズマリーなどのハーブもあり、愛らしい花の姿や香りをひとつひとつ確かめながら歩いた。
明薬資料館は、明治35年(1902年)に創立した明治薬科大学の沿革がわかる資料のほか、「蘭学事始」の時代の道具や書物、動物や植物の生薬など、薬学の歴史がわかる展示が興味深い。
水と緑と祈りの風景
大学を出て橋を渡り、空堀川沿いの道を歩くのも気持ちが良い。今の季節、緑地保全地域の雑木林の新緑は輝くようで、包まれる自分の体も新緑に染まりそうだ。改めて、水と緑を身近に感じる散歩が心身に良い影響を与えることを思う。
古い地蔵菩薩と庚申塔も、歩ける範囲にある。地蔵菩薩は明暦3年(1657年)、庚申塔は天明6年(1786年)となっていた。どちらも、きれいに手入れされ、地域の中で大切にされている。自転車に乗って来た方が、さっと降りてお参りをし、また自転車に乗って去って行った。日常に折り込まれた風景に心が温かくなった。
(※明薬資料館は、日月金・第2土曜日・祝日・大学の休業期間は休館。開館は、火水木13時~16時、土10時~13時)