vol.59【番外編】あたらしい古書店を訪ねて(1)国分寺駅北口

 出版不況と言われ、大手書店閉店がニュースになる中、個人店主が営む古書店は増えている。本で日常を潤わせ、人と人をつなぎ、町の風通しも良くしていくような古書店。そんな古書店を少しずつ紹介してみたい。初回は、JR中央線国分寺駅北口から徒歩10分内の4店舗から。

王道の軽やかな佇まい

 駅から北へまっすぐ5分ほどの「七七舎(しちしちしゃ)」。不思議な店名の由来を聞くと、店主の北村誠さんは苦笑いするだけで何も語らず。ありそうな由来を言ってみたがどれも違うようだった。
 某古書店で10年勤務の後、ここに以前あった店を2016年に引き継いだ。隣も借りて店を拡大。あらゆるジャンルの本があり、100円均一の棚にも「これは」と驚く本が見つかる。ガラスケースに高価な古書も。
 飄々とした北村さんは、王道の古書店主のイメージがあるが、話してみると気さく。他におすすめの書店があるか聞くと、店名をあげて「あそこはすごい。行くとお金がいくらあっても足りない」と語る口調は熱く、本好きの情熱を感じた。

面白いを継続する場所

 七七舎から東の路地に入ったところにある「早春書店」。2019年3月開店と最も新しいが、この間にすでに著者を招いた店内トークイベントを開催。「面白いことを継続し、バトンを渡せる場所に」と店主の下田裕之さん。
 下田さんは1984年生まれ。生まれた頃にあたる80年代サブカルチャー(音楽、映画、漫画などにおける、主流ではないカルチャー)が好きで、関連書を探すために学生時代から古書店に通った。大手書店に10年、吉祥寺の古書店で1年働いて、この店を開店。
 好きなサブカルチャー関連はもちろん、「敷居を低くして、誰が来ても何か欲しい本が見つかるように」と、いろいろなジャンルの本を並べる。新刊書も扱うのが特長で、小さな出版社の本やフェミニズムの本などをセレクトして置いている。

カフェと本の幸せな時

 本を読むのにぴったりの落ち着いた雰囲気の喫茶店が「胡桃堂(くるみどう)喫茶店」。店内の棚に新刊と古書をたくさん置き、自由に読めて、買うことができる書店でもある。
 担当する今田順さんによると、「50年、100年残る本」という基準でセレクトしているそう。それらの本のほか、地域の人から預かった古書の販売をする点がユニーク。預ける人が、本についてのメッセージを書いて付けることが条件。大切に読んできた本に、思いを書き添えて次の人に届けるという、古書ならではの再生のかたちがここにある。

子どもの夢から大人へ

 「雲波(うんぱ)」は、床や壁、本棚も木の優しい雰囲気。居心地が良い。共に図書館員だった夫婦が、所有する2万冊を元に2014年に開店。2年後に夫の勝彦さんが亡くなりしばらく休んで再スタートし、妻の石川七重さんが営む。
 店名は、後周の皇帝、柴栄(さいえい)の「雨過天青雲破処」から。雨が過ぎ雲が破れて見える青が理想の青磁の色という意味。「雲を破る力はないけれど、雲の波に漂うくらいはできるかなと」と石川さん。
 ジャンルは幅広く置いているが、図書館で児童書担当だったため、児童書や絵本が充実。絵本画家の小野千世さんと鈴木義治さんの原画も展示されている。「本の言葉には力がある。ごみに出すことなんかできない。人に手渡さなければ」という石川さんの言葉に古書店の真髄があるように思う。

●七七舎(国分寺市本町3・11・16キーパークV 1F)11時~22時、無休。
●早春書店(国分寺市本町2・22・5)12時~20時、定休日/月。
●胡桃堂喫茶店(国分寺市本町2・17・3)11時~18時(日・月)、11時~21時(火・水・金・土)、定休日/木。
●雲波(国分寺市本多1・1・17)12時半~19時、定休日/火・水・木。

Comments are closed.